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みなさんこんばんは~(*´ω`*)
どうやら上司の風邪をもらってしまったらしく
なんだか喉がいがらっぽい管理人です。
野菜ジュースを飲んで、今日は早く寝ることにします。
さて、本日ご紹介しするのは
牧野修さん『だからドロシー帰っておいで』です。
自分の読書傾向を省みてみると
中年のおじちゃんおばちゃんが頑張っている話に弱い(゜´Д`゜)
それがグロかろうがなんだろうが、
とにかく私の涙腺スイッチは「最弱」になってしまいます。
本作の主役は伸江と呼ばれる36歳の中年女性。
特に不幸な生い立ちでも、幸福な生い立ちでもない。
そこそこ幸福な一般家庭の持ち主。
人並みに悩み、人並みに苦しみ、
それでも別にそんなに不幸だとは思ってこなかった。
という人生だったんですね。
でも、あとがきで牧野さんは
毎日毎日少しずつ少しずつ自分でも気づかないうちに、
おりのように溜まっていく不幸っていうのがあるとおっしゃっています。
これはあー、なるほどなと思います。
一度に注射しちゃうと死んじゃうような毒薬でも、
少しずス少しずつ飲めば同じ量飲んでも死なないみたいな。
でもいずれその不幸は救われなければならない、
せめて小説の中だけでも救われてほしい!
その考えには大いに同意します。
以下ネタバレ
現実サイドと、ファンタジーサイドが繰り返しに綴られ、
伸江の旅を違った視点から楽しめます。
それぞれが微妙に関連しあい、
現実サイドにいかにして収拾をつけるのか
ワクワクドキドキしてページをくる手が止まりません。
タイトルのとおり、題材はオズの魔法使いです。
ライオン、カカシ、ブリキの代わりに、
ミロク、クビツリ、地蔵という個性的すぎるメンバーが
旅のお供になります。
それぞれ心の中にある失ったものを探します。
現実世界で連続殺人を起こすもうひとりの彼女もまた、
ホームレスのライオン、自殺した美術教師の手首、
ブリキ人形と揶揄される老人の入院患者を仲間にします。
ファンタジーサイドのお話はこれだけでも一つの作品になるんじゃないの?
というくらい世界観が確立されていて、
そのおぞましい描写と幻想的な空間のミスマッチは
ダークファンタジー好きの期待に十分に答えてくれます。
物語の終盤、彼女たちは望んでいたものを手に入れます。
伸江が欲しかったのは誰かに愛された記憶でした。
電車で旅をしたたった少しの思い出が、
祖父と旅行したたった少しの思い出が、
彼女のささやかな幸福でした。
なんだかホロッと来ちゃいます。
平々凡々と暮らしているたいていの人は
大きな苦しみを感じない代償として
小さな幸せすら感じられないようになっているのかもしれません。
それを感じた彼女は確かに、前の彼女ではないんです。
徐々に(歪んだ?)人間らしさを取り戻した彼女に
いつしれず共感した女性読者は私だけじゃないはず!!
いやー、よかったです。
ドロシーはすべての「平々凡々に暮らすちょっとした不幸な女性」を
救うために帰ってきてくれたんですね。
これから嫌なことがあったらこのお話を思い出すことにします。
牧野さんって人間の奥底に無意識に眠らせている
誰にも見られたくない汚い感情だとか、
ふとした瞬間に思い出す子供の時に考えていたくだらない疑問とか
そういう見過ごしがちな景色を書くのがすっごくうまいと思う。
この小説も、読んでいて「あー!この人はなんで私の心の中を知っているの?」
と何度も思わさせられました。
軽く読めるし、けど十分にその世界に浸れるし、
軽妙な会話もあるし、不思議な登場人物いるし、
「こんなのが読みたい!」をうまく集結させてくれたいい作品でした。