- 儚い羊たちの祝宴 (新潮文庫)/新潮社
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みなさんこんばんは~(*´∀`*)
最近夜が温かいことで春の訪れを感じます。
もう桃の節句も終わり、本格的に春ですねぇ。
大学受験が今日で終わったよ!という人も
いるかもしれません。お疲れ様でした( ^ω^)_旦
きっと受かっている!
自分は楽しいキャンパスライフを送っている!
というワクワクを胸に、結果を待つといいですよ。
引き寄せの法則!
さて、本日ご紹介しますのは米澤穂信さん『儚い羊たちの祝宴』です。
米澤さんを拝読するのはこれで2作目ですが、
どちらかというと日常のミステリ系で有名な方だったんですね。
前に読んだ『インシテミル』がすごく面白かったので
てっきりガチガチの凄惨なミステリー得意です!みたいな人かと思ってました。
本作は、両家のご息女ばかりが集まる読書サークル『バベルの会』を
取り巻く、お金持ちの家で起こる後味のわるぅい物語群です。
どの短編も最後の一文(もしくは最後の段落)でスコーン!と落ちます。
綾辻先生のあの作品で有名なこのミステリファンをうならせる手法は
フィニッシング・ ストロークと言われるそうです。
本作はそれに徹底的にこだわった作品。
以下ネタバレしてます
①身内に不幸がありまして
孤児だった村里夕日は丹山家の使用人として拾われ、
そこで吹子というお嬢様の身の回りの世話お仰せつかります。
吹子の上にはどうしようもない兄がいて、
その兄が本家を急襲、吹子が返り討ちにします。
しかし、その一周忌、三回忌に吹子をいじめていた
叔母と大叔母が次々となくなります。
吹子を慕うあまり、自分が寝ている間にふたりを殺してしまったと
夕日は恐れおののき、自縛して眠りにつきますが…。
殺人の動機がブラックですよね。有名な都市伝説を思い出しました。
「旦那の葬式で素敵な男性を見つけた女が、
翌日自分の息子を殺した。何故か?」
という問いかけなんですが、「息子の葬式で彼にまた会えるから」
というブラックなオチがついてるんです。
眠りに恐怖した吹子は、合宿に行かなくていいように三人を殺したんですね。
そして眠りに関する小説の多さにもビックリ。全部読んでみたい。
人の死をただの個人的な理由のために安易に作り出す
歪んだ人間観が恐ろしかったです。
②北の館の罪人
昔、自分の自由のために家を飛び出した早太郎。
彼は六綱家の北館に半ば幽閉されるような暮らしをしていた。
その身の回りの世話をすることになった先代当主の妾子あまりは、
自分の私利私欲のために彼を手にかけるが…。
絵画のカンバスの色が徐々に変化していくというトリックは何かで読んだ気が、
加納朋子さんの話に「禁忌色」っていう題材があったからそれかな。
この話はそのトリックがとてもブラックなオチを誘引していて素晴らしい。
手が赤くなることを絵に書いた早太郎は彼女が罪人だと知ってたんですね。
あまりのさっぱりした犯行動機は盗人猛々しいとはまさにこのことで
むしろ納得してしまうような嫌な清々しさがあります。
③山荘秘聞
これはささーっと読んだあとポカーン(゚д゚)となり
「え?で?凶器はなんなのさ!ヽ(`Д´)ノ」となってしまいました。
もう作者さんの術中に見事にはまってしまったんですね。
気持ちいいくらいに騙されました、恥ずかしい。
別荘の管理人守子は仕事を完璧にこなす使用人。
彼女の不満はただ一つ。別荘に誰も人が来ないこと。
そんな折遭難した青年を見つけた彼女、
そして彼を探すためにやってくる救助隊…。
彼女が救助隊を一日でも長く別荘に引き止めるためにやった隠蔽工作とは…?
これねぇ!もう!殺したのかと思うじゃん!
「人間を黙らせる」=殺すってことだと思うでしょ(゜´Д`゜)
でも、彼女の黙らせるは本当の黙らせるってことだったんですね、
ずっしりと手に持っていたものは札束。お金で二人を黙らせたんです。
文字通り、沈黙を買ったっていうことですね。
彼女が言っていた特殊な渉外活動は多分高額な取引のことかなにかで、
指が切れそうな…は新札の形容詞として使われるし、
ゆき子さんが「きっと今頃喜んでいる」のは
登山するための資金が思わぬ形で手に入ったから。
物騒なのは読者の頭の中ばかりなりということでした。
④玉野五十鈴の誉れ
良家の祖母の影響で、常に緊張しっぱなしで生きてきた純香。
彼女に与えられた使用人五十鈴は、彼女に自由と勇気を与えてくれた。
しかし、純香の入婿の父親の兄が殺人を起こしたことで、
彼女は追放こそまぬがれたが幽閉の身に…。
しかも、再婚した母親に男の子が生まれたことで、
祖母は彼女を亡きものにする計画を立て…。
もう悲惨としか言い様がない話です。
「最初ちょろちょろ中パッパ…」から五十鈴が長男を殺したことは
明白ですが、それにも何か意図があると思うのは勘ぐりすぎ?
赤子泣いても蓋取るなは釜の蓋だから(゜´Д`゜)
焼却炉の蓋じゃないからああああああ(゜´Д`゜)
⑤儚い羊たちの晩餐
金はあるが品と教養はない、典型的な成金の父を持つ鞠絵。
彼女のところに来た新しい厨娘、夏は
一つの料理を作るのに膨大な材料を使っていた。
ある日、鞠絵が夏に注文した料理はアミルスタン羊。
この羊を手に入れるために夏は『バベルの会』のメンバーに会いにいくが…。
アミルスタン羊というのはスタンリィ・エリンの『特別料理』に出てくる羊なんですね。
出ました、何故か管理人が読む本読む本に出てくるカニバ系/(^o^)\
『二壜のソース』も確かカニバ系の小説だったよなぁと思っていたから
オチはなんとなく分かりました。
こりゃどちらの作品も読まないとだめですな。
厨娘というシステムは全く知りませんでした。
『暘谷謾録』という本にその贅を凝らしすぎる料理について記述があるようです。
唇だけを調理されることとなったアミルスタン羊は
一体何匹(何人?)殺されてしまうのか…。
全5編でした。どれも後味悪すぎ\(^ω^)/
「最後の一撃」とまでは行かなかったんですが、
どれもミステリ好きの足元をすくってくる
見事な作品だな~と思いました。
もっとミステリに詳しかったらさらに楽しいのかも!