- 怪奇探偵小説集〈1〉 (ハルキ文庫)/角川春樹事務所
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こんばんは~(*´∀`*)
もう2月も終わりだというのにまだまだ寒いですねぇ。
自分はスカートで出勤することが多いので、
タイツを履くことが多いんですが、
二重に履いてるっていう方は結構いらっしゃんでしょうか。
二重にするとお腹に食い込んで苦しいんですけど…。
あれ…自分だけかな…。
さて、本日ご紹介しますのは
鮎川哲也さん編の『怪奇探偵小説集』です。
この本でしか読むことのできない幻の作家の
幻の作品が多数収録されているとのこと…!
いずれも戦前、大正後期~昭和初期の方の作品で、
当時の流行りなのかかなりおどろおどろしいものが多いです。
文体も今と比べれると幾分硬い感じはしますが、
自分はこの時代の文章がどうやら好みらしいです。
淡々としているのに、どこか劇画的というか…。
初めて読む作家さんが多かったですが、
その何人かは戦争で亡くなられており、
戦争のせいで素晴らしい作家さんまでとられてしまったのだなぁ
と残念な気持ちになりました。
以下、一言ネタバレ感想
①悪魔の舌 村山槐多(かいた、と読むそうです)
友人から届いた一通の電報、慌てて駆けつけると友人は部屋で死んでいた。
その電報の示すところに彼からの手紙が残されていた、
その手紙によると友人は人肉嗜食に魅入られ、
あろうことか自分の腹違いの弟を食べてしまったのだった…。
自分の犯した罪に耐え切れず、自分を悪魔だと形容する
人としての弱さを感じる作品。
②白昼夢 江戸川乱歩
街で演説をぶつ一人の男、その男の弁によると
奥さんを殺してバラバラにし、死蝋にして店に陳列しているそうだ。
その話を面白がって聞く町人たち、真実に気づいてしまう主人公。
まさに白昼夢のように自分だけ異世界に行ってしまったような
不気味な不安が襲ってくる作品。
内容的には多分普通に面白いレベルだけれど、
空気感といいますか、アヤシイ感が匠です。
③怪奇製造人 城昌幸
古本屋でなんとはなしに購入した一冊の日記、
紐解いてみるとなんと筆者は殺人鬼に殺され、
その時の状況を続けて殺人鬼が書いているではないか…!
「いかがでした?こんな物語は?あなたのお気に召しましたかしら?
日記をお買いになったお客様!」お茶目だなお前は!
乱歩の「人間椅子」思い出した^p^
④死刑執行人の死 倉田啓明
この作品は現在では使ってはいけないような言葉が多用されてたご様子で、
随所に削除された箇所があります。そんなにエグい話だったのか…!
厳粛な死刑執行人が、ある日。前日に女性死刑囚を括った縄で首吊り自殺をしていた。
一体何故?ドMの心理が不思議な魅力で書かれています。
当時SMなんてあけっぴろげに吹聴できないご時世、
よくぞ書いてくれた!と思ったSM愛好家もさぞかし多かったことでしょう。
⑤B墓地事件 松浦美寿一(みすいち、と読むそうです)
7編だけをものして世を去ったアマチュア作家さんだったようです。
ある梅雨の曇りの日に、A君は昔馴染みの吾市くんを見かける、
久しぶりに会ったというのに彼はとても慌てた様子で
B墓地に行ってくれとだけ言うと姿を消してしまう。
訝しく思いながらも墓地に行ってみると、ひとりの男が拇指をきつく縛ってくれという。
はぁ(゚Д゚≡゚Д゚)?となりながらも縛るA君。
数日後、ちょうどその頃吾市君が殺人を犯していたことが発覚、
相手はなんとA君が拇指を縛ったあの男…!
ちょっと読みにくいかなーと思ったけど、怪奇風味は◎
⑥死体蝋燭 小酒井不木
これはどこかで聞いたことある話な気がする。
コピペとかで有名なのかな、伏線とオチが非常にうまい。
とあるお寺の小坊主さんと和尚さんが嵐の夜に見回りをする、
ふとある菩薩様の前で足を止めた和尚さんが世にも恐ろしい話をはじめる。
実は和尚は人の焼ける匂いが大好きで、
前の小坊主さんは和尚さんが死蝋にしたのだという。
でも今夜その蝋燭もなくなるから、お前死んでくれないか?というもの。
もちろん嫌っす!という小坊主さん、
じゃあ代わりに菩薩像の裏に隠れている強盗を殺してくれるか
とするりとナイフを懐から出す和尚さん。
この寺パネェwwwと逃げ出す強盗。
でも実は和尚さんの話は全部嘘!
強盗から安全に身を守るための嘘なのでした。
扇子をナイフに見せたり、
恐ろしい話をするにあたり、強盗に聞こえるためにわざと大声を出したり
するところは芸が細かい。
短さの中に腕が光る逸品。
こういう短いコピペ流行らないかなぁ…。
⑦恋人を食う 妹尾アキ夫
なぜか私が読む作品に多いカニバ系\(^ω^)/
好きなのかな?寄せちゃうのかなこういう話をw
日本海を進む船の上で、白井はとある旅行者の話を聞く。
その男はゲテモノ食い好きが高じて、愛した男を手にかけてそれを食べたという。
でも実はそのお話は白井が昔に書いた小説そのままの話だったよーんというオチ。
心の中でほくそ笑む白井さんwwワルですw
⑧五体の積木 岡戸武平
これはホラーと怪奇と探偵小説がいいバランスで配合されてる!
お妾をほったらかしにしカフェーで遊びにふける主人公、
そのもとに一枚の手紙が届けられる。
その手紙には、愛するお妾を氷漬けにし、四肢をバラバラにし、
積み木のように矢鱈めったらに積み上げるぞ!という脅迫文。
文字を積み木のように並べてあるのが不謹慎だけど面白い。
凄惨オチかと思いきや、切られたのはお妾さんにそっくりのマネキン!
最近彼女をほったらかしにしていた男にお灸を据えたのでした。
⑨地図にない街 橋本五郎
仕事も何もかもうまくいかず、ほうけたようになっていた主人公の前に
現れたルンペン風の、しかしてどことなく品がある男。
彼はこの街でなんでも手に入れる術を知っていた。
そして、最後には女も抱かせてくれるという…。
しかしこの女はルンペン氏の奥さん、
そしてルンペンさんは由緒正しき大金持ち。
子供ができなかったルンペンは主人公に種付けさせるために
大掛かりな芝居をうったのでした。
事実が明るみにならないように精神病棟に入れられた(と思われる)
主人公の悲痛な叫びが救われない…。
⑩生きている皮膚 米田三星
とある医者への復讐のために、
自らの刺青をその医者の愛する奥さんの胸へ
移植させた女。
しかし、奥さんの皮膚は呪いとなって彼女に襲いかかり…!
話の順番が工夫してあるので、なかなか興味深く読めます。
古き良き綺譚という感じ。
⑪謎の女 平林初之輔、謎の女(続編)冬木荒之介
前半を書いた作者さんが途中で死んでしまったので、
後半を公募したところ、冬木さんの作品が選ばれたそうです。
あるホテルで、美しい女に10日だけ夫婦ごっこをしてくれ
と頼まれた主人公の男。一体何故…というところで前半終了。
さて、この謎にどのように落とし前をつけるのかしらんと思っていたところ、
嫉妬に狂った彼女の旦那に、浮気相手を殺させるという趣味が彼女ら夫婦にはあるそうで、
そのターゲットに選ばれたのが主人公だったというオチになっていました。
しかし主人公に本気で惚れた彼女は、
彼だけは助けてあげたんですねぇ。なるほど!すごいなぁ…よく思いつくなこんなの。
⑫蛭 南沢十七
ガス療法だとか吸血療法だとか「ェ…」ってなる治療を専門にしている無免許医。
彼は、堕胎手術を無許可で行ったことを揺すってきた男を殺そうと画策。
使用するのは吸血療法で使う血抜き装置。
ちょっと時代を感じるお話だけれども、
マッドな医者が真面目におかしなことする話っていいよね(何が)
⑬恐ろしき臨終 木下宇陀児
これは救えない話だ(゜´Д`゜)
人望に厚い弁護士は、一人の男の犯罪について証言し、
全く悪気なく彼を死刑に処する原因を作ってしまう。
まもなくして彼は死亡、それに前後してその事件の真の殺人者から手紙が届く。
そう、彼は冤罪で人を一人死刑にしてしまったのだ。
これを読む前に死んでよかったね…という知人だったが、
実はその弁護士は柩の中で息を吹き返し、その手紙が読み上げれるのを聞いていた!
己の罪をしった彼は柩の中で再び舌を噛み切って死に…。
やるせないですねぇ…。
⑭骸骨 西尾正
主人公ふるい友人、吉田の堕ちていく様が痛々しく書かれた作品。
殺す理由がね、もう行っちゃってますよね。
犬を殺した悔恨を忘れるために奥さんまで殺したっていうね…。
倒錯した人間の心理ってこんな感じなのかな…。
文章がなんだか演劇の独白みたい。割と好きですこういうの。
長々と陳腐な言葉(ヴィエイユ)を並べ立てた。
筆を最後の破局(カタストロフィ)に転じよう。
この厨二病的なかっこよさは な ん な ん だ!
⑮舌 横溝正史
横溝さんが別のペンネームで書いていた作品だそうです。
怪奇なものばかりが売っている雑貨屋さんに立ち寄る主人公。
ここに売ってるものが怪奇好き人間の心をくすぐる…!
グロテスク趣味の仏像やキリスト像、地獄絵図…。
怖いけど興味ある…!
そこで見つけたホルマリン漬けの人間の舌…!
一瞬の幻のごとくふっと終わるグロ幻想な一遍。
⑯乳母車 氷川瓏(ろう、と読むそうです)
これも儚い掌編。
道ですれ違った乳母車に乗っていた赤ん坊が京人形で、
お母さんの顔が人間のものとは思えぬほど美しいってだけなんですが、
印象的な作品。
⑰飛び出す悪魔 西田政治
当時はサーカスといったら怪奇趣味歓喜!な娯楽だったんでしょうか。
サーカスで怒った三角関係の悲劇。
サーカスのスター女優に惚れた悪魔役の男は、
悪魔の人形のふりをして綱渡りをする彼女に近づき、
テントに火を放って…。
ミステリ的な展開だから、誰でも楽しめそう。
⑱幽霊妻 大阪圭吉
大阪圭吉さんって確か有栖川さんが高く評価していたような。
本作も、この本の中ではかなり本格ミステリ寄りの作品です。
不義の疑いをかけられて自殺した妻が
旦那に復讐しにやってきた?
旦那の死体があった屋敷の窓の鉄格子はこの世のものとは思えない力でねじ切られ、
現場には内側の磨り減った下駄(奥さんが和服好きでこういう風に歩く癖があった)、
櫛に残った長い髪から、屋敷の下男はそう思い込んでいました。
しかし、真相は奥さんに昔お世話になった力士の犯行。
力士はそりゃ力は強いし、足の親指に力を入れるから
下駄がそう言う風に減るのだそうです。
怪奇な現象に理路整然とした答えを用意する、
本格推理も楽しめる怪奇短編。
以上の18編でした。
いやー、短いながらもどれもいいです。
この時代のどろどろした雰囲気好きです。
なんかまだエロとグロ前回です!みたいなね。
これは3巻まででているそうなので、
続きも読みたいと思います。