- 壜の中の手記 (角川文庫)/角川書店
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こんにちは~(*´ω`*)
皆さんバレンタインデーは如何お過ごしでしたか?
本命は渡しましたか?もらいましたか?
私は職場で思いっきり義理のチョコを
女性スタッフ3人で共同購入という
血も涙もないバレンタインを過ごしました_(:3 」∠)_
本日ご紹介しますのはジェラルド・カーシュさん『壜の中の手記』です。
こちらイギリスの作家さんで、短編に定評のある方だそうです。
解説の方に言わせると「綺譚」という表現がぴったりだとか。
読んでみると、奇妙な味よりはもっと趣旨がはっきりしていて、
だけど、「なんだかわからない恐怖」を表現するのがお上手。
作家にしては珍しい従軍経験から、
戦争に対しても一定の見解をお持ちの様子。
ジャンルもミステリ、SF、ホラーと多岐にわたる、
小松左京さんのアクをもっと強くした感じでした。
個人的には好みの部類だ(*´ω`*)
ちょっと怖くてちょっと不思議でサラっと読めて
でも読んだあとになんか残る短編読みたい!
という方には全力でオススメする作品。
以下ネタバレ一言感想
①豚の島の女王
ある無人島で4つの奇妙な死体が発見された。
一人は巨人、二人はこびとのように小さく、
あとの一人は四肢のない女性のもの。
これは船の難破事故で流れ着いた、
見世物小屋の人間たち。
四肢のない女性はその世界のカリスマで、
飛び抜けて美しく、飛び抜けて頭が良かった。
しかし、そのせいで残りの3人の男たちは
お互いを殺し合い…。
これって皮肉なの…?
力のもたないものが何かを手に入れようとすると失敗するよ的な?
②黄金の河
酒場で出会ったピルグリムという男に貸してやった
酒代の担保のために金の小粒をもらった主人公。
彼の話を聞くと、アマゾンでやったティクトゥク
(ナッツを投げてボーリング的なことをする遊び)
で騙されて負けたそうな。
騙し合いと賭けに熱くなる男の性は読んでいて楽しいです。
結局ピルグリムさんの言ってることは本当だったのかなぁ。
③ねじれた骨
とある未開の地の監獄で長年生活する主人公、
周りはワニや未開の地の民族が住み、決して逃げられない。
ある日主人公は未開地の民族が監獄に逃げ込んできたところを
助けてやったお礼に、秘薬をもらう。
どうやらその秘薬を体に塗ると
ワニに狙われなくなるらしい。
さらに未開の地の民族に襲われないように、
ねじれた骨の装飾品をもらう。
主人公は監獄で知り合った気の合う人間に
それらの品を渡し、逃がしてやることにする。
しかし、未開の地の民族のいう「自由」と
我々の考える「自由」は全く別物だった!
彼らの「自由」は魂が解き放たれた状態、
すなわち死ぬことでした。
通常よりももっと残虐に殺された友人は哀れな姿に…。
こういう常識の裏をかいた作品ってぞっとします。
④骨のない人間
とある船員が積荷を載せている港に、
ひとりの男が這々の体でやってくる。
彼は近くにある火山近くの調査隊の一人で、
火星からやってきた宇宙船を調べていたのだとか。
そこで発見された骨がなく、手足が恐ろしく短い
醜悪な形をした人間。
それが火星人か?と思いきや、
実はそれが人類の成れの果てで、
我々の方が火星人だったんだ!
という小松左京さんでよく見たパターンのオチ。
⑤壜の中の手記
海外版「注文の多い料理店」と聞いていたけれど、
なるほどなぁwという感じ。
でもこちらは相手が普通に人間なので、
わろえないw
展開としてはほとんど同じ、
主人公の男が、森の中の豪邸に住む品のいい男に
手厚い歓迎を受ける。
マッサージ受けたり、肥え太らせるために美味しい肉も食べさせてくれます。
しかし途中ではっ(;゚Д゚)!としてからくりに気づいて、
事のあらましを紙にしたため壜に隠したんですね。
主人公のアンブローズ・ビアスさんは実在のジャーナリスト。
カーシュさんとはどういう関係なのかな…?
⑥ブライトンの怪物
これは名作短編の一つだと思う。
ブライトンヘルムストン沖の海上で漁師が捕まえた怪物は
体中が奇っ怪な模様で覆われ、言葉を発しても要領を得ず、
腫れ物が生じ、葉が抜け落ちて行く奇病にかかっていた。
この怪物が実は1945年、広島の爆心地にいた日本人で
模様は刺青、病気は放射線障害だったのでは?と匂わせて終わります。
この物語にどんな結論を付けるかは読者の自由だが、
この物語が決して始まりの物語でないことを願うという言葉に
戦争を間近で見てきた作者さんの考えが垣間見えます。
⑦破滅の種子
ただのパイプを有名人の使ったパイプに、
ただの燭台をとある貴族の使用していた燭台にして
ガラクタを高値で売りつけることを生業としていたジスカ、
彼がいわくをつけた宝石がやがて真実味を帯びてきて…。
所有者を不幸に陥れる宝石の話は
いくつかありますが、こういう創作もあるのでしょうね。
⑧カームジンと『ハムレット』の台本
この作家さんはこの大詐欺師カームジンシリーズが
人気だった作家さんだったようです。
貴重な蔵書を愛するカームジンは、
友人のためにベーコンの偽書物を作成するが…。
暗号風味の展開もあってなかなか面白いです。
⑨刺繍針
とある少女は刺繍針でいかにして叔母を殺したか?
ミステリーテイスト強めで面白い。
少女の無垢な狂気って怖いですよね。
⑩時計収集家の王
私は時計屋さんや、時計の蒐集家の話に目がなくてですね、
谷山浩子さんのラジオ番組『悲しみの時計少女』や
綾辻さんの『時計館の殺人』なんかが好きなんですよね。
この話もいろんなからくり時計が出てきて面白い(*´ω`*)
これは時計を蒐集し続けた王に、
とある時計屋がその王そっくりのからくり時計を作るお話。
くぐもった声でギクシャクと動く
時計の描写が不気味でイイ(・∀・)!!
⑪狂える花
植物に少年犯罪者の血を薄めた水を与えると
花が意志を持って人を襲うようになり、
挙げ句の果てにそれは動物に感染して…。
SFテイストの破滅的なお話。
この人の作品はとても映像的ですね、
勢いがあってとにかく面白い。
⑫死こそ我が同志
武器成金となった所謂「死の商人」、サーレクは、
希望以外の全てを手に入れた男。
しかしその死の淵にあって、
彼はすべての望みを失っていた。
半ば死への憧憬を抱いた彼の最後は…。
武器を売ることはあくまで商売であり、
それを誰がどう使おうが責任はないという主張に
疑問を投げかけた作品なのかな?
ディスティングロルが何かわからなかったんですが
多分「反物質」みたいなものなのかな?
収集がつかなくなる前に引き返さなければならないよ、
と言われている気がします。
以上12編、さらに解説にカーシュさんの生涯がまとめてあるので
「へぇ~こんな人が書いたのか!」と楽しめること請け合い。
最近読書スペース落ちてますが、
これはおもしろすぎて電車を乗り過ごしたくらいなので
かなりオススメ。