謎の物語 (ちくま文庫)/筑摩書房
¥861
Amazon.co.jp


( `・ω・) ウーム…最近読書欲が低下気味の管理人です。
本が面白くないというよりは、他にやらなければならないことや
関心事があってなかなか活字に手が伸びないという。
でも読書分(糖分みたいなもの。必須栄養素)がないと
日々の生活を乗り越えられないので、
読まない→落ち込む→更に読まない→活字を求めて浮浪
というスパイラルに陥ってしまいます。
みなさん、定期的に読書分、摂取していきましょうね。
 
今回は紀田順一郎さん編『謎の物語』。
「続きはWebで!」じゃないけれども、
「続きは!?オチは!?正解は!?」と思わず叫んでしまう
リドルストーリーの傑作ばかりを集めた短編集です。
奇妙な味に少し近いかな。
 
「それって作者の結末放棄じゃないのヽ(`Д´)ノ」
と憤るなかれ。これはこれで十分に質の高い作品なんですよ。
逆に考えてみてください、なぜオチもないのに
これだけ読み継がれている作品なのか?
それは構成の妙であったり、謎へ人を引き込む手腕であったり
残る余韻の快良さ(或いは悪さ)であったり
物語のオチ以外の要素が一級であるからですよ!
 
中には一回さーっと読むだけでは凡人には理解できない
作品もあります。私も「ふーん(´ー`)」で終わっていて
解説を読み「こんな話だったのかああああ」というのが
いくつかありましたw読解力のなさww
 
こういったリドルストーリーは昔、社交界で話題になることが
多かったらしいです。お酒の肴にって感じですね。
なので友人と、恋人と、家族と、
「君ならこの続きをどういうふうに書く?ハニー」
なんて語り合ってみるのも一興ですぞ!
 
以下ネタバレ一言感想です。
 
①「恐ろしき、悲惨きわまる中世のロマンス」マーク・トウェイン
 
トム・ソーヤーの人ですね。こんな短編も書いてらっしゃったのね。
ブランデンブルグ公爵であるウルリッヒを兄に持つ老クルーゲンシュタインは、
その父からとある約束を言い渡されていた。
それは、兄に男の子が生まれず、自分に男の子が生まれた場合
世継ぎをその子に譲るというものだった。
クルーゲンシュタインは娘を授かるが、その子を男の子として育て
世継ぎに仕立て上げてしまう計画を立てます。
 
しかし、ウルリッヒの娘が彼に惚れてしまい、
挙げ句の果てに彼のあいだに未婚の子供を産んだと吹聴したからさぁ大変。
身の潔白を証明するためには自分が女であるとばらさねばならない、
しかし、ばらしてしまったら女の分際で判決を下してしまったのがバレてしまう。
いったいどーなんの!?となったところで物語は終了。
トゥエインさん…オチ考えてから書いてくださいよ!w気になる!
 
②「女か虎か」F・R・ストックトン
 
既読です。アンソロジー『天外消失』より。
 
③「三日月刀の督励官」F・R・ストックトン
 
前作、「女か虎か」が物議を醸し「続きどうなったの?」攻撃に耐え兼ねた
作者が書いた続編です。しかしこれもしっかり読者を煙に巻きますww
 
「女か虎か」の成り行きを闘技場で見ていた他国の民は、
その結末を見届けることなく闘技場を逃げ出してしまった!
続きがどうしても知りたいその国の民は、
使者を派遣して続きを聞きに来るが…。
 
そこで高官は客人を更に困らせるために別のお話をします。
それは、この野蛮な国に嫁をもらいに来た王子が、
自分の選んだ女を大勢の女の中から見つけられたのか?
というこれまたリドルストーリーww鬼畜です。
 
④「女と虎と」J・モフィット
 
物議を醸した「女か虎か」、続編も多く書かれたようです。
これもその一つ。おー、なるほどね。と思わせる内容。
 
結論から言えば、「二つとも開いた」という落ちですね。
実は結論を迫られていた青年は、扉の向こうの美女のことも
疎ましく思っており、両方の扉を開けて、
女を虎に食わせ、自分は二つの扉で出来た空間に隠れ
難を逃れたというものでした。
 
ラストはイエスとともに磔にされたっていうオチなのかな?
マタイとかヨハネとかポンティオ・ピラトって書いてるから
多分その時代の人なんだよね…?
 
⑤「謎のカード」C・モフェット
 
とある紳士が劇場の休憩中に、一人の婦人から手渡されたカード。
しかしそこに書いていたのはフランス語で、彼には読めなかった。
ホテルに帰って支配人に訳を頼んだところ、
彼は顔色を変え「すぐに出て行ってくれ」と行った。
そんな仕打ちを妻に、生涯の友人にもされた彼。
一体カードにはなんと書いてあるのか。
 
いてもたってもいられなくなった彼は、カードを渡した張本人の
婦人を探し出す。しかし彼女は病床に伏し、命の火は燃え尽きようとしていた。
彼女の口からカードの文言は語られず、
残されたカードはなんと白紙…。ぞっとする名短編!
 
⑥「続・謎のカード」C・モフェット
 
ご本人が書いた「謎のカード」の続編。
オカルト要素の強いホラー短編になっています。
カードにこの世ならざるものが取り付いていて
持ち主を次々と死に至らしめるといった内容のもの。
ホラーとしては面白いかな~と思いますが、
前作の余韻を楽しみたい人は読まない方がいいかも。
 
⑦「穴のあいた記憶」B・ペロウン
 
劇作家のアニクスターはある夜、ミステリーの傑作を思いつきます。
それは、完全な密室で婦人が殺される不可能犯罪のトリックでした。
バーで知り合った身も知らぬ小男にその構想を話しますが、
店を出た瞬間交通事故に会い、記憶をなくしてしまいます。
 
傑作の構想がどうしても思い出せず、小男を必死に話すアニクスター。
しかし、やっとの思いで見つけた小男は
アニクスターのことを見たこともない人だといいます。
一体何故そんな嘘をついたのか?
 
答えは新聞に載っていました。
アニクスターの考えた不可能犯罪が実際に行われていたのです。
彼の話を聞いた小男の仕業であることはすぐにわかりました。
 
そしてアニクスターに忍び寄る犯人の魔の手!
正しくここは密室!犯行を行うのには絶好の場所でした。
冷たい刃に身を貫かれながらアニクスターが思い出した
驚きのトリックとは!
 
トリックがわからなくても十分に楽しめる名作。これ好き(*´ω`*)
 
⑧「ヒギンボタム氏の災」N・ホーソーン
 
ヒギンボタムという人望に厚い地主の男が殺された。
という噂を道ですれ違った男に聞いたドミニカス。
しかし、実際にはヒギンボタムは殺されてなんていなかった!
なーんだ、と思っていたドミニカスが件の犯行現場に行ってみると
なんとほんとにドミニカス殺されかかってるううううΣ(゚д゚lll)
 
仲間割れした犯人から殺人のお話を聞いていたというオチでした。
 
⑨「茶わんのなか」小泉八雲
 
湯飲み茶碗に入れられたお茶の水面に、
とある青年の顔を見出した侍。
気味が悪いと思っていたら、件の青年が実際に目の前に現れた!
思わず切ってしまう侍だったが、
後日、その侍の家来がやってきて男に必ず復讐するという。
短い怪奇譚。
 
⑩「指貫きゲーム」O・ヘンリー
 
南北戦争の傷跡の残るアメリカのお話なんですね。
由緒あるカートレット家で生まれたジョンとブランドフォード
しかし一方は北部、一方は南部に別れてしまい
お互い敵として南北戦争を戦うことになった。
 
北部人と南部人の違いはなんなのか?
なぜ南部人は軽蔑されなければならないのか?
という人としての本質をえぐった深い作品だと思います。
 
お話は、由緒あるジョン・カートレットの世話人が、
彼に時計を届けるという話なんですが、
似ているふたりを前にして、世話人はどちらに時計を渡すのか
迷ってしまうという話なんですね。
あんなに軽蔑していた南部の人間なのに!
 
一応公式の正解は「黒いネクタイ」の方らしいですが、
青だという人もいるようです。なるほど。リドルストーリーです。
 
⑪「ジョコンダの微笑」A・ハックスリー
 
風采の上がらない男が、浮気に走った挙句
病弱だった前妻が死んで墓の土も乾かぬうちに
浮気相手と結婚した。
警察前妻の体からヒ素が検出され、
夫の家からヒ素を使用した殺虫剤が検出されたことから
彼を殺人の容疑で逮捕した。
 
だけど実際に殺したのは彼に横恋慕していた
近所のオールドミスでした\(^ω^)/というオチ。
論理的な解答は用意されていないのですが、医者の
「コーヒーのなかへ入れたんですね?」は
なかなかに印象的なセリフ。
 
⑫「野原」ロード・ダンセイニ
 
これはちょっとわからんかった。
主人公の男がロンドン郊外の野原に行って
「なんか嫌な感じ」を受けて、
その原因はなんなのか?と追求する話なんですが…。
「ここは、戦場なのだよ」といった詩人は
未来に起こる戦争を予知してたんでしょうか?
 
でも実際にあるこの丘は
今も平和な土地だそうです。わからん!解答求む。
 
⑬「宵やみ」サキ
 
サキさんは短編の名手として名高いですが、
読むのははじめましてです。いや~ニヤリとしますね(。-∀-)
ベンチに腰掛けた男に、ひとりの男が声をかけてきます。
話を聞くと、彼はとある事情からいまお金が手に入らなくて
さっき石鹸を買って、お酒を飲んだら無一文になっちゃったというんですね。
翌日になったらお金が入るから貸してくれと
もう一方の男に頼みます。
 
しかし、男は彼の話を嘘だと見抜き、
「だったら証拠にさっきの石鹸見せろよ。そしたら貸すから」
的なことを言うんですが、男は石鹸をどっかに落としちゃったテヘペロと
言うんですね。詰が甘かったんです。
 
しかし男が去ったあとにベンチを見ると、
なんと石鹸が落ちてるじゃござんせんか!
彼の言っていたことは本当だったのかとお金を貸してやった男でしたが
そこにまたひとりの別の男が。
なんでもさっき落とした石鹸を探しているのだとか…。
 
⑭「園丁」ラドヤード・キプリング
 
読んですぐは(゚д゚)ポカーンだったんです
解説サイト様や聖書の記述を読んで、
なんとなくわかった…のかな?
 
死んだ弟の息子を育てていたヘレン。
しかし愛を注いだ甥は戦死してしまいます。
その息子の墓石を探す彼女に、園丁がいいます。
「あなたの息子さんのいる処を教えてあげよう」と。
聖書の中でイエスを園丁としてたとえているところから、
この園丁は全知全能の神を表しているのかもしれません。
もう嘘をつかなくていいよと。
 
⑮「七階」ディノ・ブッツァーティ
 
健康な患者は7階、それからどんどん病状が悪くなるにつれて
1階へと下ろされていくという機能的な病院。
そこに入院することになった主人公は
度重なる手違いで7階から徐々に下の部屋に移されるが…。
 
太陽の光を遮ってブラインドが下ろされていく描写がとても印象的。
 
以上の15編でした。
いや~短いのに破壊力があるwwwどれも曲者です。
答えの決まっている優等生ミステリーに飽きた人は
奔放すぎる謎に弄ばれてみるのも一興ですぞ。