スケルトン・クルー〈1〉骸骨乗組員 (扶桑社ミステリー)/扶桑社
¥651
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もう寒くて無理!((((;゚Д゚))))
雪で電車止まるとか無理!((((;゚Д゚))))
その上残業とか無理!((((;゚Д゚))))
 
一週間の始まりがなんとも凄惨な結果に終わった管理人です。
とにかく上司には帰る直前に仕事を押し付けてこないように
やんわりとご注進申し上げるつもりです。
でも上司もサボってるわけでも無能なわけでもなくて
ただちょっとうっかりさんなんだけなので
傷つかないようになんと言えばいいのか…。
 
さて、こんな萌え系上司を持つ私が本日ご紹介するのは
S・キング『骸骨乗組員』でございます。
本を読む人が一度は江戸川乱歩の少年探偵団シリーズを通るように、
大学生が何故かW村上を読んでしまうように、
善良な読書小市民の皆さんはきっとキングを読んできたはず!
私も高校生の時にどはまりしましてですね、
新潮文庫の黒い表紙に心躍らせたものです。
 
キング?は?誰それ知らねーわ。という人も、
『ショーシャンクの空に』や『グリーンマイル』といった
映画はおそらくご存知でしょう!
これは実はS・白キングの作品ですよ。
キングは基本は黒キング(グロホラー)なんですが
たまに白キングになって読者を本気で泣かせに来るので
注意が必要です。
 
さて、本書『骸骨乗組員』ですが、
これはキングの『スケルトンクルー』という本を
三冊に分冊した文庫の第一巻です。
中編が1本と短編が5本収録されております。
 
キングは自分の私生活や作品への姿勢、
好きなものや、読者への呼びかけ
何かを結構すんなりと書いてくれる作家さんなんですね。
本書の冒頭にも、この作品をものしたときの
生活状況だとかアイデアの着想なんかが書かれていて
「書く側の人はこんなふうに考えるのか~」と
とても興味深く読めました。
キングの作品ももちろん好きなんですけど、
キングの人柄とかにも惹かれるんですよね。
(自分の原作映画に俳優として出ちゃったりねw)
 
以下、一言ネタバレ感想。
 
①握手しない男
 
ある男が昔話をする、といった冒頭で始まる物語。
グレグソン老人はかつて若かった頃、
ポーカーゲームをしようと人を募ったがひとり足りない
そこでちょうど店にいた一人の青年に声をかけた。
それがブラウワーであった。
 
ブラウワーはどこか影を湛えた人物で、
おかしなことに頑なに人と握手をしないのだ。
本人はそのことをボンベイに行った時に
疫病に関して特に敏感になっていしまったからだといったが…。
 
ポーカーも大詰めになり、かつてないほどに掛金が膨らんだ。
ここら辺の緊張感のある描写はやっぱり帝王だな~と安心。
高校生の時に手に汗握りながら読んだ記憶が蘇ってきて
ちょっと感傷にひたる。
そしてその戦いに勝利したのはブラウワーだったが、
戦いの緊張が一瞬にして切れたのか
仲間のひとりが不用意にブラウワーの手を握ってしまう。
 
突然店を飛び出すブラウワー、追いかけたグレグソンが見たのは
疥癬病にかかった犬に触れる彼の姿だった。
その後、その犬は死んでしまった。
 
ある人の話だと、ブラウワーはボンベイに行ったとき、
思いがけない事故で子供をひとり殺してしまうに至った。
その時にその子供の母親の怒りを買い、
自分の手を握ったものが死に至る呪いをかけら得てしまったのだという。
 
まさか、と思ったグレグソンであったが、
タイミング良く鳴った電話が告げ知らせたのは
昨日彼を握手をした男が死んだという報告だった。
 
キングは現代に呪いなどといった超常現象を持ち出すのが上手ですね。
『痩せゆく男』も確か呪いの話だったような…。
 
②ウェディング・ギグ
 
これはぶっ飛んでるwwwおぞましいけど何故か爽快な気持ちになるw
バンドでトランペットを担当している主人公は、
スコレイというチンピラに妹の結婚式で
演奏をして欲しいと頼まれます。
 
この妹がデブでブス、旦那の方はチビで完全なるノミの夫婦。
その式場で相手のマフィアの手下に妹を馬鹿にされたからもう大変、
怒り狂ったスコレイはあっけなく敵マフィアに撃たれて死にます。
 
その後スコレイのグループの勢力をぐんぐん拡大し、
その世界の頂点に上り詰めた妹。
同じデブブスとしてすごいかっこいい(*´∀`*)
 
③カインの末裔
 
カインは弟が神に愛されたのを妬んで
殺してしまった聖書の登場人物です。
これは掌編で、学校の寄宿舎生活を送っていると思われる
ギャリッシュという青年が住銃をぶっぱなして
次々と同級生を殺害していくという話です。
 
ギャリッシュは生前の友人の会話を聞いていると
結構人気者というか、嫌われているわけでもなく
かといって牛耳っているわけでもなく
普通の子なんですよね。それがいきなり爆発しちゃう。
 
カインとアベルのお話をモチーフにしているのだおともうのですが、
一体何がギャリッシュの弟で、羊だったんだろう…?
 
④ほら、虎がいる
 
気弱な少年チャールズが男子トイレで見つけた虎。
虎は同級生を喰らい、大嫌いな担任の先生を喰らった。
虎はチャールズの理想を形にしたものなのかしら?
試験前日に「あー明日地球爆発しねぇかな」って想像しちゃうのが
まさかの現実になっちゃった!みたいなお話。
キングって鬱屈した男の子の心情を書くのが上手ですよね。
 
⑤霧
 
これは『ミスト』っていう映画にもなっているので
知っているぜ!という方も多いのではないでしょうか。
監督さんは『ショーシャンクの空に』『グリーンマイル』の人と
同じ人なんですよ。前作二つに比べてあまり日本ではパッとしてないですけどね。
 
個人的に主人公のドレイトンを演じたトーマス・ジェーンが好き(*´∀`*)
『ディープブルー』の男前っぷりに
高校生だった私は狂喜乱舞しておりました。
(ホラー映画で狂喜乱舞って今から思えばちょっとおかしいわ…)
 
あらすじは至極簡単。
7月19日の大嵐を堺に、ロング・レイクをはじめとする
南部全体が濃い霧に襲われるというお話。
キングの小説は描写がいいんですよね、
もちろんオチやネタや構成も一級品なんですけど、
まるで自分が主人公の目を通して
本当に嵐の過ぎ去った町を見ているみたい。
倒れた木々や、火花を散らす電線、
そして自然のものとは思えないおぞましい白い霧
どれもが強く印象に残ります。
 
さて、親子は大型スーパーマーケットにいるときに
霧に襲われてしまいます。
しかも街が霧に覆われた瞬間から
だれも店にはやってこなくなった。
それどころか店から出て行った人たちは
不気味に消えていってしまった。
 
霧の中になにかいるのではないか?一体何なんだ!?
読者の不安はますます強くなります、
そんな中、通気口を開けようと店の外に出た男が
イカの触手のようなものに襲われ
霧の中に引きずり込まれていくという事態が発生。
うーん、いきなりSFちっく。
 
さらに店にいるのは嫌だと店を飛び出した男に結びつけておいたロープは
赤く染まって無残にちぎれて戻ってきた。
ここもすごく上手ですよね。。
恐怖そのものを見せないで、
想像力を最大限に引き出すシーンだと思います。
 
結局、仲間数人で店を飛び出したデヴィッド父子でしたが、
行けども行けどもあるのは死体ばかり。
ラストは名言されずに終わっています。
キング自身も自分で卑下しているように
「続きは読者のご想像にお任せします」パターン。
怪物の正体も結局はわかりません。
でも、しっかりと道筋は示してくれています。
それがラジオから聞こえてくる希望という言葉なんですね。
(ハートフォードは地名だそうです)
 
変に救われるラストや絶望すぎるラストよりもいいと思います。
物語全編に流れる雰囲気にもあったいい終わり方だと思います。
 
いやー、久しぶりに読みましたがキングはやっぱりいいですね(*´∀`*)
うまい。うまいし、面白い。
何より読者の近いところにいてくれるみたいで安心します。
今年は『キャリー』がリメイクされるとかいう噂もありますし、
まだまだ帝王には長生きして欲しいものです。