七人の証人 (講談社文庫)/講談社
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「さむいね」が一つの挨拶のようになってくる季節ですね。
ただの気温への感想なのに、ぼっちの私は
それを言われただけで寒いどころか温かい気持ちになります。
どうもこんばんは、皆さんお元気ですか。
誰が読むんだという俺得ブログですが、
管理人は皆様の健やかな健康をお祈りしております。
 
おっと、NHKの『趣味悠々』みたいな出だしになってしまいました。
最近電車の中で文庫本を手にしている人が多い気がします。
気のせいかな?でもほっとんどの人がブックカバーをされていて、
どんな本なのかわからない!気になる!
綺麗な女の人が可愛いブックカバーつけながら
『肉食屋敷』とか『眼球綺譚』とか読んでたらいいのに…。
声かけたくなる(´ε` )
 
本日ご紹介しますのは西村京太郎『七人の証人』でございます。
これはクローズドサークルものの話を探していて、
オススメしていただいた作品ですね。
ご存知十津川警部モノです。
私はドラマも見たことがないので十津川さんは初めましてなんですが、
役者さんとしては渡瀬恒彦さんイメージ。
公式プロフィールでは163cmと結構小柄なんですね。
 
西村京太郎といえば小難しい時刻表トリックが有名ですが
これはそんなに小難しくありません。
どちらかというとサスペンス的な色合いが強く、
一気に読ませて、ストンと落としてくれます。
ほんと、安心して読めますね。
 
以下ネタバレしてます!
 
ある日の帰宅途中突然頭を殴られた十津川警部。
目を覚ましたのはある街の一角だけが精巧に再現された、
奇妙な無人島でした。
 
同じような境遇で目が覚めたのは警部の他に7人。
訝しむ彼らの前に突如として猟銃を所持した男が現れます。
それこそ、この事件の首謀者、佐々木勇造でした。
集められた7人は、過去に起こった殺人事件の証人。
佐々木はその事件で有罪判決を受けた青年、信夫の父親で、
息子の有罪がどうしても信じられず証言の再検討をするために
ブラジルで稼いだお金を使ってこんな奇妙な町を作り上げたのでした。
 
例によって例のごとく、該当する事件の証言が
綺麗に現れていきます。十津川警部はそれを公正に判断するために呼ばれたジャッジ。
いい迷惑っすねほんと。
話が進むにつれて完璧と思われた証言が
意識的にせよ無意識的にせよ欠陥を含んでいることがわかってきます。
人間は保身のための小さい嘘なら平気でついちゃいますもんね…。
 
バーの常連客小林ととそこのママふみ子の証言
信夫は被害者が店を出た直後にナイフを持って店を出て行った。
ふたりはその前に口論をしていた。
 
銀行員岡村と千田の証言
信夫がナイフを持って道を横切っていった
→信夫だとは断定できないが、男が横切っていったに訂正
 
浪人生山口
信夫が被害者を刺し殺す瞬間を見た。口論の声も聞いた。
→実際には死体にしゃがみこむ信雄を見ただけ。何も聞いていない。
 
果物店店主、つね
信夫が人を刺殺した後、ナイフを持って入店、
りんごと現金を奪って逃走
→現金はつねが着服したもの。りんごはお金を払って買ったものだった。
 
証言の覆し方がいささか強引だなとは思うものの、
執念と言えるほどの執拗さで(しかし正確に)
事実が改められていきます。
これは下手な人間が書くとだらけがちでしょうが、
小競り合いを入れたり、ひやっとさせたり
読者を飽きさせない西村京太郎さんの技巧が光ります。
 
さて、このようにして証言を一つ一つ改めているうちに
現実にも事件が起きてしまいます。
銀行員の岡村と千田、そして後に果物屋のつねも殺されます。
解説の方もおっしゃってましたけれど、プロットが素晴らしいですね。
過去の事件を原因として現在の事件が誘発される
というのはよくある展開ですが、
リンクのさせ方が絶妙です。
そして現在の事件で二人の銀行員が殺された動機が、
過去の事件の真犯人を浮き彫りにするという流れもスムーズです。お見事。
 
犯人はバーの常連客の小林さんで、
動機は再就職口を断られたからというあっさりしたものでしたが、
サスペンスの醍醐味は十分に味わえます。
いやー、西村京太郎の本気おそるべしです。