天外消失 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ1819)/早川書房
¥1,470
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昨日は鏡開きだったようですね、
今日もお善哉orお汁粉という方も多かったのでは?
私はお餅もあずきもそんなに好きではないので、
食べなかったですけどね!
 
また、私は昨日職場の上司に
「あれ、28歳だっけ?」と言われて
かるーく、いや、かなりおもーく
落ち込んでおります。
誰か励ましてくれヽ(;▽;)ノ
 
こんな根暗陰湿ヒッキーという三拍子
そこに外見の不憫さも入れて四拍子揃った私。
職場の皆さんから変人認定を受けるのも
そう遠くはないでしょう…あぁ、転職しなければ。
 
さ、転職のこと考えると気分が暗くなるので、
今日の本の感想をば。
本日はハヤカワ・ポケット・ミステリより、
『天外消失』。傑作短編集です。
エラリークイーンズミステリマガジンの良作を翻訳し、
さらにその中からあまりメジャーではないものを
選び抜いた作品集です。
全然聞いたことがない作家さんも多くいらっしゃいました。
 
翻訳は読みやすいのと読みにくいのとありましたが、
話の流れくらいは私にも追えるのでそんなに問題なかったです。
 
では、一言ネタバレ感想行ってみよ!
 
①ジャングル探偵ターザン エドガー・ライス・バロウズ
 
まさか推理小説系アンソロジーを読んで
ターザンの名に出くわすとは思いもよらなかったです。
ターザンはほかでもないあのターザンです。
腰巻みたいなのをつけて、綱に掴まって「ア~アア~」
って言ってるあの人です。本家です。
(ちなみにこの失礼千万なイメージはきちんと是正されました)
 
ターザンは白人夫婦の産み落とした子供で、
彼らは森で白骨死体となってしまっています。
ターザンは彼らの荷物から、「片側が円錐形で鈍い灰色をした
ピカピカ光る金属の円筒体」を拾います。
 
一方その頃ジャングルでは、ターザンの所属する類人猿の群れのメスが
別の群れのオスにさらわれてしまいます。
メスの旦那さんとともに追いかけるターザン。
結局そのメスは、ターザンが拾ってきた金属の円筒体が起こした爆発により
助けられます。手榴弾だったのかな?
ターザンの身体能力と人としての思慮深さがわかった作品。
頭空っぽのサル人間じゃなかったのね…。
 
②死刑前夜 ブレット・ハリディ
 
とある悪人を殺した罪で、メキシコへ逃げてきたサム。
彼は語り手である主人公の仕切っていた土木工事で測量の仕事をし、
二人は言葉にする必要のない信頼を築いていく。
 
私これ感想サイト見るまでオチ分かってませんでした\(^ω^)/
ずっとサムが犯人で、主人公はその思い出話してるだけかと思ってたw
違ったwサムは主人公(犯人)を連れ戻しに来た警官で、
明日電気椅子に座るのは主人公だったんですなwww
ノミの読解力wwww
 
③殺し屋 ジョルジュ・シムノン
 
初めて読むメグレ警部もの。
彼はポーランド人強盗団を捕まえようと、
彼らに見張りをつけている真っ最中。
三人の容疑者と、その一人が囲っている女。
その中に「殺し屋スタン」と呼ばれる
腕利きの殺し屋がいるらしい。
 
そんな折に、一人の死にたがりの人間が
自分にスタンを捕まえさせて欲しいと言ってくる。
メグレは彼を利用して仲間の女に罠を仕掛けるが…。
 
実はスタン=彼女だったんですね。
そして死にたがりの男は彼女を殺したがっていた元夫。
めでたく彼女は殺されちゃいました。
 
④エメラルド色の空 エリック・アンブラー
 
チサール博士というチェコの亡命者が探偵の作品。
この人の警察からの嫌われっぷりと空気読まなさワロタwww
毒殺された富豪の犯人を見つける話ですが、
ヒ素化合物の水溶性と腎臓から検出されるヒ素が特定の決め手。
 
しかしヒ素が絵の具に含まれているなんて知りませんでした。
 
⑤後ろを見るな フレドリック・ブラウン
 
ホラーテイストの入った素晴らしい作品。かなり好み。
お話は、ジャスティン・ディーンというしがない印刷工が、
ハーレイという友人のためにブル・マロンという男に復讐する話。
 
彼が印刷工という仕事がのちのち生きてくるんですが、
読者が今読んでる本そのものが、ディーンが印刷した本で、
ブル・マロンがこの小説に夢中になってるあいだに
彼を刺し殺すという宣言なんですね。
まるで自分がマロンになっているかのごとく、
最後の数行を読んでいるあいだはビクビクします。
読み終わったあとに、ぐさりとナイフが刺さってこなくて良かったヽ(;▽;)ノ
 
日本で言うメリーさんの怖さです。
 
⑥天外消失 クレイトン・ロースン
 
きました表題作。これは紛れもなく密室の名作の一つ。
探偵は奇術師でもあるマリーニー。
作者さん自身もアマチュアマジシャンだったらしいです。
泡坂妻夫さんっぽいですよね。
 
ある占い師が予言した通りに、
一人の女性と、厳重な監視下にあったはずの検事が失踪した。
しかも検事は、二人の警官が見張っていたにもかかわらず、
電話ボックスから忽然と消え失せた!
 
非常にいい謎です(*´ω`*)現象が面白い!
トリックそれ自体は隣に入っていただけという
単純なものですが、それを様々な手段で補強しているのがイイ!
 
ボックス1 故障中の張り紙
ボックス2
ボックス3
 

 
ボックス1
ボックス2 共犯者が張り紙を2に移動
ボックス3 その後、検事が入る
監視していた警官は、検事は「張り紙の右の個室に入った」
としか認識しない
 

 
ボックス1 共犯者、張り紙を1に戻し、警官を呼ぶ
ボックス2 警官はもぬけの殻のボックスを見る
ボックス3 検事悠々と逃走
 
刑事である共犯者の存在、無関係な第三者による怪しすぎる予言、
ボックスに残されていた血のついた眼鏡、
どれこれも考え抜かれた補強です。お見事!
 
⑦この手で人を殺してから アーサー・ウィリアムズ
 
酷い仕打ちをされて、女に逃げられたウィリアムズ。
しかし、女は結婚に失敗し、彼を頼って帰ってきた、
彼女を殺したウィリアムズは絶対に死体が見つからない方法を
考え出す…。
 
死体を食べちゃうという処理方法は有名(?)ですが
やはり骨の問題なんかがありますからそううまくいきませんね。
これは骨粉などにしてにわとりに食べさせてます。
間接的カニバリズムの被害にあった皆さん(´・ω・)カワイソス
そして多分メイドさんも近いうちに…。
 
⑧懐郷病のビュイック ジョン・D・マクドナルド
 
銀行を襲撃していったやつらのアジトはどこか?
残されたビュイックのラジオ受信電波から
その場所を突き止めるお話です。
天才少年ピンクくんのこまっしゃくれた感じが○。
 
⑨ラブデイ氏の短い休暇 イーヴリン・ウォー
 
女性を絞殺するも、心神喪失から
とある閉鎖精神病棟に入れられ、
そこで残りの人生を過ごしていた老人ラブデイ。
彼らはほかの患者や医者の面倒をよく見る、
まさに模範的な患者だった。
 
その境遇を不憫に思った女性が、
少しの間だけ彼を病棟の外に出すことを願い出、
彼は束の間自由になるが…。
 
なんのために女性を殺さねばならないのか
是非とも彼に聞いてみたいものです。
 
⑩探偵作家は天国へ行ける C・B・ギルフォード
 
この話は、何者かに殺された推理作家アリグザンダーと、
彼の天国行きを案内する天使長ミカエルの会話から始まります。
自分を殺した犯人が分かるまで幸せなんてありえない!と主張っする作家と
天国に不幸せなんてあってはならないという規則に頭を抱えるミカエル。
非常にコミカルで面白い。読みやすい。
ミカエルは、彼を24時間だけ生き返らせ、
死ぬ前の1日を過ごさせることを提案します。
 
思い返してみると彼は様々な人から命を狙われていました。
妻とその愛人、ゴーストライター、息子、使用人…。
この中で一体誰が犯人なのか?
しかし犯行の前に犯人を特定するなんて不可能ではないか?
 
そう考えた作家は、5人を自室に集め、死亡時刻まで
そこで過ごさせることを思いつきます。
結局彼は殺されちゃうんですが、
消えた電灯とハンカチの位置から犯人を特定する手腕はお見事。
事件が起きたあとに捜査が始まる従来の推理小説とは
一味違った工夫が楽しいです。
 
そしてミカエルにそんな入れ知恵をしたのは
過去の推理小説かの大御所たちでしたw
 
⑪女か虎か フランク・R・ストックトン
 
これはミステリ好きの人じゃなくても知っている
超有名な短編であり問題作だそうです。
とある国の王様が催す残酷な処刑、
対象者は闘技場の中で、二つの扉を
選択させられる。
 
一つは虎、その扉を開ければ確実に死ぬ。
もう一つは女、その扉を開ければ望むと望まざるとにかかわらず
絶世の美女と結婚することになる。
 
今回処刑されるのは、王女の間男。
しかし、彼は王女に愛を囁きながら、
別の女に手を出していた。
しかもその女は、二つのうちの一つの扉の前で待っている。
 
そして迫る選択の時、
王女は手を尽くし、どちらの扉が虎なのか、女なのかを知る。
王女は彼にどちらの扉を指し示したのか…?
 
これは明確な答えは書いてないですが、
流れでいうと虎の方をさしちゃうのかな…?
でも男が素直に王女の指示に従うかどうかはわかりませんよね、
王女が虎を指すかもと予想して逆に行っちゃうかもしれないし。
これは考えさせられます。
 
貴方が女なら、どっちの扉をさしますか?
貴方が男なら、指された方の扉に入りますか?
 
⑫白いカーペットの上のごほうび アル・ジェイムズ
 
寂れたバーで絶世の美女に誘惑されたしがない強盗、
彼女いわく「約束を守ってくれたらご褒美をあげる」だそうな。
彼女の美しさと官能的な誘いに負けて、
マンションまでのこのことついていった男が見たのは
別の男の死体!彼女は彼に死体処理をさせたがっていたのでした。
 
美貌に負けて死体を処理してマンションに戻るも
彼女に「あんた誰?」と言われてしまう始末www
早く気づけよwwwそんなうまい話あるわけないじゃんw
男は立腹し、死体を再びマンションへ…。
 
⑬火星のダイヤモンド ポール・アンダースン
 
作者が物理屋さんということで、SF色の強いミステリ。
大きなダイヤモンドを載せた無人の星間飛行船。
しかし、到着するとダイヤは跡形もなく消えていた!
 
これは飛行船が無人であり、スカスカな構造だということ、
飛行中に進行方向と逆にかかるGと、
着陸時にかかる引力が働くということを利用した鮮やかなトリック!
探偵がかの英国の名探偵の精神を引きつぐという設定も、
この作品の親しみやすさを増幅させている。
 
⑭最後で最高の密室 スティーブン・バー
 
ベトラス・デンダーという男が、屋敷で殺された。
その屋敷は彼が特注で作らせただけあって、
金属で強化された窓ガラス、錠前、
床暖房に地下の焼却施設、すべてが一級品であった。
その中で彼は、自室で首を叩き切られおり、
その斧は地下室で見つかった。
屋敷は完全な密室、しかし自殺とは考えられない。
犯人は一体どこへ行った?
 
これは密室問題への鮮やかな解答の一つです。
つまり、犯人である息子は焼却施設で
自分の身を焼き灰になっていたというオチ。
そこに至るまでの親子関係も丁寧に書かれて、
大変にドラマチックで感情を揺さぶる仕上がり。
これはミステリとしても、短編としても
名作だと思います。
 
さて、以上の14編でした。
海外ミステリ読み慣れてないので、
読むの辛いな…っていう作品もありましたが
読み終わってみるとどれも印象的なものばかりです。
入門編としは良かったんじゃなかろうか。
こんな良作を日本に提供してくれる早川さん
いつもいつもありがとうございます。