- 天国からの銃弾 (光文社文庫)/光文社
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みなさんこんばんは。
正月休みが今日までという方も
多いかもしれませんね。
ゆっくり休めましたか?いっぱい遊べましたか?
私は今日家の近所を散策していたら
農業用の網にかかってもがいていた雀を発見しまして。
あわてて薬局でハサミを買ってきて逃がしてやりました。
それが果たして良かったことなのか
いけなかったことなのかわかりませんが、
なんとも自分にこんな善良な心が残っていたのかと
戸惑いました…。
さて、本日ご紹介するのは島田さん『天国の銃弾』
これは島田さんの中ではどういう位置づけなのかな?
島田さんは短編集をそれなりに出してらっしゃいますが、
あまりこれが名作だ!とは聞かないですね。
佳作の一つという感じなのかな。
本作では3つの短編が楽しめます。
読んでみて、やっぱり魅力的な謎を提示する手腕は健在。
そして島田作品中期から徐々に、作中に織り込まれるようになった
島田さんのペダンチックな話運びも見え隠れします。
では以下ネタバレ感想行ってみよ!
①ドアX
駆け出しの女優、マキ子はある日易者に、
「『X』という文字の書かれたドアの中に、
あなたの願いを叶えてくれる人物がいる」と言われます。
そう言われたマキ子は『X』のドアを探し回ります。
しかし、彼女の身には数々の不思議な出来事が起こります。
全ての建物に「DAITO」と書かれていたり、
乗ったバスの窓からはまるで同じところをぐるぐる回っているように
同じカフェやパン屋、花屋が何度も何度も見えたり。
そして挙げ句の果てに喫茶店の冴えないマスターにそれを言い当てられたり。
わけのわからなくなった彼女が落としたトランクからは
「DAITO」というメーカーのミニチュアのおもちゃがいっぱい詰まっていました。
喫茶店の冴えないマスター森田の談によると、
マキ子は自分がもう64歳であることを頑なに認めようとしていないとのこと。
東京に来て悪いとこに騙され、身ごもり
それでも一途に彼のことを愛したマキ子。
子供の成長を認める=自分の老化を認めることになるため、
その事実にも目をつぶり永遠の若さに生きたマキ子。
それではいけないと思い、森田は一計を案じます。
それは、マキ子の孫と彼女を会わせることによって、
現実を受け入れてもらうという作戦でした。
会合はとある有名ホテル、ホテルの回転ドアから孫の太郎が出てきます。
しかし、現実を受けいられず見て見ぬふりを貫くマキ子。
そんな時、太郎が回転ドアに挟まれてしまいます、
どんどんと太郎の首がしまっていく中、彼女は一人太郎を救出しようとします。
結局この一件でマキ子は現実を受け入れる決心をしたのでした。
そして回転ドアは『X』の形をしていたという素敵オチつき。
ミステリー色は弱めですが、
ぐんにゃりとした不思議な世界が整然と整っていくカタルシスは充分!
②首都高速の亡霊
うっかりと五階のベランダから鉢植えを落としてしまい、
とある男性を死なせてしまった平凡な女、桃代。
彼女は彼氏とともに、停電と路線バスを利用し、
死体を遠くへ運び去ることを目論みます。
計画は成功し、彼女はなんの責任も取らずにすみました。
ところ変わって場末のキャバレーでは
天下りをくり返し、法外な退職金をもらい生活している寺田と、
それをネタに強迫を試みる腰巾着、坪井の姿が。
ここら辺の国土交通省の話は完全に島田さんの趣味だろwww
と思いますが、こんなことが当たり前に行われているのかと
世事に疎い自分の無知さを反省…。
寺田は坪井をあるマンションの近くで撲殺、
車で引き返してきて死体を処理しようとしますが
なんと死体が忽然と消えている!
そう、桃代が自分が殺したと勘違いして処理しちゃったんですね。
しかし、事件はこれだけでは終わりません、
不可思議に思いながらも家に引き返した寺田が窓から見たのは、
バスから投げ出されて偶然にもこちらを向くように座り込んだ
坪井の姿でした。まるで首都高速の亡霊のように。
これを見た寺田は心臓麻痺であっけなく死んでしまいます。
ラスト「金銭絡みで始まったこの事件だったが、
その結果として大きく損をしたものはどこにもいなかった」
というのは、高速道路関連産業のことを暗示してるんでしょうか。
不法なことがこれでもかと行われているけれど、
誰もがみんな甘い蜜を吸ってるんだよ~という…。
③天国からの銃弾
消防署跡の火の見櫓で夕焼けの写真を撮ることを趣味にしていた
老人渋沢増達とその息子公一は、写真に写りこんだ自由の女神の目が
定期的に赤く光ることを発見します。
そしてその秘密を探っていた公一は、ある日
その自由の女神があるソープランドの屋上で首吊り自殺をします。
彼の死に疑問を感じ、調査をはじめる渋沢。
「自由の女神の目が光る」…なんて魅力的な謎なんでしょう(*^ω^*)
その光り方に規則性が有り、それが徐々に解けていくところは
はらはらドキドキします。
結局は猟銃好きの看板屋が、松明に弾が命中したら
目が光るように細工していたというオチなんですね。
なんとも酔狂な趣味ですこと。
でもそれだけじゃこの話は終わりません。
なんと、公一は、嫁を脅迫しに来た男を殺そうとして、
逆に返り討ちにあっていたということが判明するんですね。
その男は再度彼女を襲い、例の自由の女神がある屋上に立てこもります。
そこでじいちゃん登場!
昔戦場で鳴らした腕で、見事男を狙撃。
まるで天国からの銃弾が彼女を救ったみたいに!
ストーリー、謎うまくまとまってる印象です。
でも三作ともなんだかちょっと文章が固め…?
説明描写が長いというか…いや、もちろん読みやすいんですけど。
島田さん作品としては( `・ω・) ウーム…佳作かなという感じ。
でも島田さんファンなら読んで損はないと思います。