永遠の0 (講談社文庫)/講談社
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こんばんは、すっかり年の瀬ですね。
今日でお仕事納の方も多いのではないでしょうか?
ゆっくり休んで、いっぱい遊んで、
2013年も楽しんでやりましょう。
 
こう書くと、仕事してない人はプレッシャーに感じるでしょうか?
焦らなくていいと思いますよ、
私も無職の時は死にたくなりましたし、
今も不安定すぎる嘱託職員で何も解決してませんが、
なんとか生きてます。
また2013年に返り咲いてやりましょう。
 
さて、本日は百田さん『永遠の0』でございます。
もうすぐ岡田潤一さん主演で映画化されるということで、
名作と誉れ高いこともあり読んでみました。
評価は★3つとさせていただきましたが、
正直判定不能です…それくらい考えさせられました。
あまりいい感想ばかりではないと思われるので、
この作品に好意的な方は、ここから先は読まないでくださいまし…。
 
以下ネタバレでございます!
 
本作品の主人公は宮部久蔵というひとりの飛行機乗りです。
彼は、凄腕の戦闘機乗りでした。
当時の戦闘機乗りは、皆大なり小なり死を覚悟し、
文字通り決死の覚悟で戦争をしていたようです。
しかし、宮部という男だけは違いました。
彼は、同期や後輩に対し
「娘に会うまでは絶対に死ねない」とこぼし、
「臆病者」と嘲られるくらい常に慎重に戦いました。
 
その宮部が、特攻隊員に任命され、
命を落としました。あれだけ生への執着があった彼が、
どうして死地に趣いたのか?
本書はその謎を解き明かす、一種のミステリーです。
 
我々と同じ視点になってくれるのは、
26歳ニートの健太郎と、その姉でフリーライターの慶子。
彼らは宮部の孫ですが、祖母がなくなるまで
育ての祖父を本当の祖父だと思っていました。
突然名前を告げられ、戸惑いながらも彼らは、
漠然とした存在だった祖父の生き様を追い求めます。
 
物語は、この二人が、宮部を知る人たちに直接会い、
インタビューをするという形式で進んでいきます。
 
そして最大の謎、宮部は何故特攻に赴いたのか?
ですが、作中で明言はあえて避けられている感じです、
当時の特攻隊員の気持ちは現代の我々には結局のところわからない、
推し量るしかないという作者の意図があるのでしょうか。
宮部は健太郎たちの育ての祖父、つまり宮部の部下の命と引換に
沖縄の空へと飛び立ちました。
 
以下、切れ切れの感想羅列
 
○話の構成について
 
やはり広く愛されているだけあって細かく考えられ、
よくできています。
過去に宮部が命を助けた人間が、
妻松乃を助けるために暗躍していたり、
零戦の不備に敏感に気づくところが、
最後の飛行機を交換してくれという言葉に生かされていたり。
エンターテインメントとして人を楽しませる仕掛けが
たくさん詰まっています。
まさに「感動せよ」の波動攻撃です。
 
○ノンフィクションっぽいフィクションについて
 
この話はフィクションに史実を盛り込んだ作品です。
そうすることで、戦争の悲惨さや戦闘機の描写にリアリティが出て、
宮部という人物への感情移入も深くなります。
でも…なんか、うん…私はちょっと苦手でした。
戦争を材料にして、練りに練られたプロットを装飾しているような…。
戦争の残酷さや特攻隊員の人間性を伝えたいなら、
そこに虚構の美談なんてないほうがいい、
美しい愛の物語を書くなら、中途半端な現実は邪魔だと思う。
 
「戦争を題材にした映画は全て悲劇にせよ」と言っているんじゃないんです。
でも、極限状態の中に人間性を表現するのに、
宮部はちょっと超現実的過ぎるのではないかと…。
ああーこんなこと書いたらファンの方に怒られそうだ。すみません((((;゚Д゚))))
 
○人物たちについて
 
私は現代に生きているからなのか、宮部さんの行動原理が理解できなかった。
「妻のために絶対死ねない!」と固く誓い、
危ないことは決してやらなかった宮部。
身を挺して攻撃機を守る任務においてでも、
(たとえ合理的な理由があるにせよ)
自らの命を差し出すことまではしなかった。
ある意味で目的に対して忠実な人間であったはず。
 
しかし、彼は一度身を挺して自分を助けてくれた部下のために
(逡巡はしたにせよ)頑なに拒絶していた特攻に行ってしまう。
苦しんで、苦しんで、苦しみぬいて、それでも妻のために
その約束だけは守る。それが彼の行動原理だったはずなのに…。
私にはちょっとわからなかった…。
 
あと高山のような典型的な反戦論者って今のご時世いる?
世の中0か100かの人ばかりじゃないでしょう。
ひとりひとりに違う考えがあって、
戦争ってなんだろう?どうすればいいんだろう?
特攻隊員の気持ちってこうだったのかな?ああだったのかな?
と常にグラグラと揺れている状態なんじゃないでしょうか。
高山の登場は、この物語を一気にフィクションの世界へと
連れ去って言ってしまいました。
 
特攻隊員や戦争の経過、軍内部の記述部分は
私は全く不勉強だったのでとてもためになりました。
戦争という難しい題材が、ベストセラーになることによって
広く伝えられることは大変に意義があることではないかと思います。
読んでいて、先人たちの熱い思いに、
背筋が伸びる思いがしました。
 
もっといろいろ書きたかったんですが、
自分でもわからなくなりそうなのでやめておきます。
「感動した!」とは思わないのですが、
間違いなく影響を受けた一冊になると思います。
それなりに面白い本は数多あれど、考えさせられる本は貴重です。
解説の児玉清さんの名文も一読の価値ありです。