透明人間の納屋 (講談社文庫)/講談社
¥550
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本日二冊目は、出ました!ゴッド島田荘司!!

私をミステリーの世界へと引きずり込み、

ブサイクで趣味・読書という非モテ街道を邁進させる

きっかけを作った罪深き天才です。

出会いは『異邦の騎士』、今から思えばなんていうバッドチョイス!

普通は『占星術殺人事件』からだろ!と思いますが、

いいもんは何から読んでも(・∀・)イイ!


特に御手洗シリーズはお気に入りで、

「特定の作家のシリーズ作品を全部読む」という体験を初めてしました。

それほどまでに島田荘司にハズレなし!

彼の未読作品を積み上げ、一冊一冊読んでいったあの体験は

自分の人生で最も幸福な時間の一つでした。


もう冒頭から宗教じみたマンセーになってしまいすみません(;´Д`)

それほどまでに自分に影響を与えた作家さんだったもので。

彼がいなければ綾辻さんや法月さんはもしかしたらいなかったかもしれない!

正しくゴッドファーザーだったもので…。


さて、本作『透明人間の納屋」ですが、少年少女のために書かれた

ジュブナイルミステリー作品だったご様子。

そのためか、いつものペダンチックな描写は削ぎ落とされて、

前面に謎が、そして島田さんの考える「あの国」に生きる「人間」が

書かれています。


ではでは、ネタバレ感想行ってみよ!


F市に住む、母子家庭の小学生浦上ヨウイチは、

隣の印刷所に働く真壁という男性と共に少年時代を過ごす。

真壁さんは宇宙を知っていたし、透明人間を知っていたし、

小学生だったヨウイチにはすべてを知っているように見えた。

そんな真壁さんがひた隠しに隠していた秘密、

それはなんと透明人間になる薬を作る機械。

その機械のせいで真壁さんの左手は透明になっていた。


そんな真壁さんの知り合いの水商売の女、真由美が

婚約者と宿泊したホテルから忽然と姿を消し、

数日後遺体となって発見された。

だれもホテルのドアからは出入りした様子がない。

まるで透明人間になって部屋から出ていってしまったみたい…。


ヨウイチはこの犯人を、透明人間の薬を使った真壁だと推理、

母と三人で行くはずだった「理想の国」へもいかないと言い張ってしまう。

そして真壁さんは一人で「理想の国」へ旅立っていってしまう。


大人になって、ひとりの脱北者から届けられた真壁さんからの手紙。

そこには事件の顛末が事細かに書かれていた。

つまりは、真壁と真由美は実は北の工作員で、偽札を作っていた。

真由美は婚約者と結婚するため、邪魔になったもうひとりの工作員を

始末しようと、ホテルの壁を伝って外へ出て、返り討ちにされてしまった。

真壁さんはヨウイチの母を心から愛したが、

それゆえに今の所業に疑問を抱き、祖国で収容所に入れられた。

そんな内容だった。


せ、せつない(´;ω;`)

こんな切ないお話を子供に読ませていいのか。講談社やりおる。

島田さんの定義するミステリーの要素の一つに「魅力的な謎」

というものがありますが、透明人間なんてとっても魅力的ですよね。

特に子供の頃に読んだらワクワクすること間違いないだろうなーと思います。

(おいおい、ウィルスは紙には感染しねーよwとか思う子供はいないはず!)


子供の頃には、子供の時のヨウちゃん視点で、

大人になってからは手紙を受け取った時の浦上視点で、

まさしく二度楽しめる作品ではないかと思います。

誰にでも一人くらい、子供の時に出会った印象的な大人や風景があるはず。

私は木材の匂いのする物置小屋でキラキラ輝いていた埃と、

祖父を思い出したりしていました(幸い祖父はまだ健在ですが)

この作品はそんな脆い部分をくすぐる力を持っています。

改めて、ゴッド島田すげーなと。


真壁さんのようないい人ばかりじゃないのは自明だけれど、

真壁さんのような人もあの国にはきっといるはず。

島田さんにはいろんなことを教わっております…。