灰色の砦 建築探偵桜井京介の事件簿 (講談社文庫)/講談社
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こんにちは、本日は建築探偵シリーズ第四弾!

『灰色の砦』でございます。

今回は蒼君の出番は一回休み、

京介と深春が大学近くの下宿で出会った時のお話です。

相変わらずの深春(照英)の安定感。


ではでは、ネタバレ感想行ってみよ!


ある日、住んでいた下宿を突然でなければならなくなった深春。

実家との確執から親元に頼ることもできず、

見つけたのは輝額荘という格安の下宿。

そこには同じW大の生徒がたくさんいて、

大家の麻生はじめさんの人柄もとてもよさそうに見えた。

ほかに選択肢もなく、即決する深春。


京介とのファーストコンタクトでは、当時の彼の強すぎる

美貌コンプレックスがありありと描かれています。

他人との距離の取り方が今ひとつ分かっていない

若い日の彼が垣間見えます。

下宿生活は概ね良好で、ひとつ屋根のした、皆が家族のように

語らい、飲み明かし、なんの心配事もなく日々は過ぎていきました。


が、そんな生活は年始のある日突然終わってしまいます。

下宿人のひとり、井下が頭を岩に打ち付けて死んでいるのが発見されます。

事件当日の昼間下宿にいた大家のはじめが疑われますが、

証拠不十分で釈放。

警察は井下の死を事故だとし、はじめが井下の名誉のために

その窃盗について押し黙っていたと判断しました。


そうこうしているうちに、第二の殺人が。

最近下宿を利用するようになった飯村という教授の秘書が

何者かに殺されて車中で発見されました。

飯村の友人だという神代宗教授の頼みで、

京介は素人探偵をすることを引き受けます。

そしてワトソンを愚鈍に描写したドイルを罵りつつ、

深春にアシスタントをお願いします。


事件の流れをまとめるとこんな感じ

秘書の荻原→飯村路易教授が好き

保岡志帆→麻生はじめ(飯村創、路易の息子)が好き。


過去に母親を殺された恨みからはじめは飯村を殺したかった。

下宿の傍の蔵に時限殺人装置を仕掛けるも

井下が死んじゃった!

直接飯村教授に手紙を送り、呼び出す

手紙を勝手に読んだ荻原が話を付けに来ちゃったよ!

誤って殺害

荻原を追ってきた保岡に手伝ってもらって偽装工作

飯村教授自殺

実は母親を殺したのははじめ自身の事故だったんだよーん

という救われなさすぎるオチでした。


ライトという建築家の人生と、

飯村教授の人生が微妙にリンクしていたり、

ライト自身の虚栄心に満ちた人間性を暴く過程なんかは

さすが建築に詳しい作者さんだなーととても面白く読ませていただきました。


しかしこのシリーズ特有のモヤモヤ感がどうしても抜けない!

何より桜井京介という人の人となりが未だに理解できない。

事件解決なんて死者への冒涜であり、なんの役にも立たない的な

意見のはずなのに、執拗に犯人を追い詰めていたり、

最後のはじめが実は母を殺していたなんていう真相を説いたり、

それこそ闇に葬ってしまえばいい事実だったんじゃないの?と思います。


多分彼には彼なりの一貫した意見があるのだろうけれども、

理解できないんですよ・・・。

それがかれの抱える過去や、コンプレックスから来るものであるなら

それを書いていただかないと・・・いつまでもモヤモヤしまくりです。


うーん、やっぱり読み終わってスッキリ!という気分にはならない建築探偵シリーズ。

でも第五弾も懲りずに読むつもりです。だって面白いのだもの。