法月綸太郎の冒険 (講談社文庫)/講談社
¥730
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今日も寒かったですねー。
つけながら本を読める手袋ってあるのかしら?
バス待ちの間手がかじかんでしゃーないです。
風邪が流行っているようですが、
皆様どうぞお体にお気を付けくださいませ。

さて、本日は法月綸太郎さんです。
綾辻さんがスキ!有栖川さんがスキ!我孫子さんもイイ(・∀・)!
と言っていたのになんで法月さん読まないの?
自分でも思っていました、なぜなのか。
ひとつは名前が舞城王太郎さんに似てて(似てねぇw)混同してたこと、
そしてもう一つは涙涙の逸話がありました。

齢20歳の頃の私、忘れもしないクリスマスイブの日。
彼氏なんざいる訳もなく、一人で書店へ。
そういえば法月さんの本読んでみたいなーと思い
単行本コーナーをウロウロしていましたが、見つからず、
店員さんに「あの~すいません。『生首に聞いてみろ』ってありますか?」
と訪ねて、購入。

帰り道、ふと気づいたのです。
あれ?うら若き乙女がイブに何生首とか言ってんの?
イブに一人なのはそのせいなんじゃないの?と。
なんだかテンションが下がってしまった私はその本を積ん読。
以来、法月さんアレルギーなのでした。
(ご本人には全く関係がございません!すみません!)

さて、どうでもいい私の身の上話はこの辺にして、
作品の感想をば。

法月さんはクイーンのように作者さんの名前=探偵さんの名前です。
当初は探偵さんをえらいイケメンに仕立てて読んでいましたが、
途中から気のいい法月さんご本人の顔で再生されてきてwww
でも違和感がない不思議wwwいい人そうなんだよなー(´∀`*)

では、ネタバレ感想いってみよ!

①死刑囚パズル

法月さんが学生時代にお書きになった作品のリメイク。
フーダニットとしても読めますが、ホワイダニットとしてもとても面白い!

死刑執行直前の死刑囚が毒殺された!
放っておいても刑が執行されて死ぬはずなのに。
何故犯人はそんなことをしたのか?

引き込まれるWhy?ですねー。
この時点で私はもう法月さんの虜です。
内密に捜査を依頼された綸太郎さんは、
堅実な消去法で犯人を特定していきます。

犯人の条件
①犯人は死刑囚にお茶が出されるのを知らなかった
②犯人は毒を混入したあと、注射器とアンプルを処分しに外へ出ている
③犯人はダストシュートが故障していることを知らずに注射器を捨ててしまった。

しかし、以上の条件では犯人がいなくなってしまいます。
そこで新たにひとつ加えられた条件
④注射器のロットNoがあるのに指紋はなかった
→注射器が見つかることは想定外なのに犯人は手袋をしていた
→掃除婦は実は外部から来た人間!

これぞ本格とでも言いたげな鮮やかな追い込み方でした。
さらにそれが刑務官のママであることが判明。
農業試験場で働いてるという描写に「特殊な仕事ねー」と思っていたけれど、
まさか彼女が出てくるとは\(^ω^)/
お話としてもよくまとまった一篇。

②黒衣の家

これも純粋な犯人当てというよりは、
いろんな作品へのオマージュ?

とある老主人の葬式からひと月、
今度はその妻が殺された。
遺産の問題や、親子の確執などからその子供たちが
怪しまれるが、彼らには犯行は不可能。
唯一犯行が可能だった孫の澄雄だが、彼には動機がない。

そして提示される驚きの動機((((;゚Д゚))))
純粋がゆえの行動ゆえに救いがないです…。
なんかこういう心理テストなかった?八百屋のお七?

作品自体は『○の悲劇』へのオマージュらしいのですが、
Xしか読んでいない私にはさっぱり…。
ドルリー・レーンシリーズも読まねば。

③カニバリズム小論

既読。
アンソロジー綾辻行人編『贈る物語Mystery』より。
何度読んでもいいなぁ。

④切り裂き魔

図書館の本の一ページ目だけが何故か切り取られている!
傾向は推理小説だけで、そのほかの損壊はない。
本編に影響がなく、仕事も丁寧であるため
その所業は作品に敬意を払っている如く。

司書の穂波&綸太郎の図書館シリーズ。
イイ!イイ!綸太郎+警視も美味しいけど、穂波+綸太郎もイイ( ´∀`)

回答編はあー!わかるわかるわかるぅ!となりました。
登場人物紹介で思いっきりネタ割れされるいたずらがあり、
作品の面白さを守るために一ページ目を切り裂いたそうな。
うちは田舎の図書館でそんなに貸出人数も多くないので
幸いそんないたずらはありませんが、
推理小説でそれやられちゃうとほんとがっかりするんですよね。
「12個の赤丸」は最近読んだのでニヤリとできましたよ~(´∀`*)

⑤緑の扉は危険

H・G・ウェルズの幻想譚のような話。
稀覯本を蒐集していたとある男が密室で自殺していた。
部屋に通じるドアにはかんぬきがかかり、
外へ通じる緑の扉はずっと前からあかなくなっていた。
男の妻の殺人ではないかという疑いを持った綸太郎は…?

男の住んでいるところが洋館とは名ばかりの木造建築
であるところからもわかるように、扉があかなかったのは
二階の蔵書によって家が変形していたから。

トンデモだな\(^ω^)/と思ったけど実際に床が抜けちゃう事件もありますね。
法月さんは一見すると超常的で説明のつかない「なぜ?」を
きちんと説明してくれるから好きだー(*´ω`*)

⑥土曜日の本

とある男がほぼ毎週本屋さんに来て、50円玉20枚を1000円に両替していく。
この謎どっかで見たことあるぞ?デジャヴュか?
と思ったら共通のお題による競作がなされていたそうです。
多分有栖川さんのを読んだのかな…?

さて、この難しいお題に法月さんは
メタ(?)っぽい解答を用意してくれました。
小説の中でこのお題に苦しむ綸太郎、
そんな折、全く同じことをしている男の話が耳に入ります。
彼を尾行し、それが競作相手の一人、時村薫であると突き止める綸太郎。

本作では50円玉を両替する謎ではなく、
50円玉を両替しに来た男の正体は?という謎がメインになっています。
おいおいー本質の謎は解けてないじゃん(´Д⊂と思っていたら
楽屋オチという批判も実際あったようです。
これはこれで面白いからアリだと思いますけどね!
それにしても実際の作家先生の名前が面白可笑しくモジられててニヤリとしますw

⑦過ぎしに薔薇は…

本の天小口(上の日焼けしちゃう部分)ばかりを気にして、
毎日毎日本を借りていく女がいる。
返しに来た本には薔薇の栞が挟まっている。
犯人は最近失読症になったと噂される装丁家。

この「なぜ?」もとても興味深いですね!
法月さんは「なぜ?」がお得意?こういう謎が解かれるのって気持ちいい!

件の装丁家は子供の喉にへその緒が巻きついてしまって流産しており、
本の背表紙(のど)を子供の喉、へその緒をスピン(本の紐のしおり)に
見立ててそれを切り、供養していたそうな。
本のスピンが話題になる謎って『ビブリア古書堂』でもあったような。
こういう本にまつわる謎って好きだなー。

どうでもいいけど、「二語以上の単語の最初の音を入れ違ってしまう間違い」を
スプーナリズムっていうことを初めて知った。
世界中でこんな間違いする人は稀だと思っていたから意外でした。
陰山泰さんの「貧富のはがさげしい(差が激しい)
(『痛くなるまで目に入れろ』参照)」発言にもあるように。
そして館長のエーベルト・ウン○発言wwwバスで笑っちまったよww

いやー、面白かったなー!
粒ぞろいの短編を読んで面白いと、
いい作家さんに当たった!と思います。
もちろん彼のほかのシリーズにも乗り出しますとも!
そして毎回言ってるけど映像化はよ。