慟哭 (創元推理文庫)/東京創元社
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さて、三連休如何お過ごしですか。

もう本を読むくらいしか現実逃避できません。

不採用通知がなんじゃ!転職がなんじゃー!


無関係な叫びが入ってしまいました。お詫びします。

本日は貫井徳郎さん『慟哭』をご紹介。

これ一時期ヴィレッジヴァンガードでえらい推されてた記憶が。

で、勢い込んで買ってみたものの、「字、小っさ!」と

思ってずっと積ん読状態でした。もう6、7年前かな。

作者の最高傑作と誉れも高いので、改めて読んでみました。


読んでみて、字の小ささなんか気にならないくらいのページターナーぶり、

処女作らしいですが文章は非常に読みやすいです。

遅読な私が1日で読んじゃうくらいだから相当のもんです。


では、以下ネタバレ感想行ってみましょ!


本書は、

奇数章→新興宗教に嵌っていく無職の男、松本

偶数章→連続幼女誘拐事件を追う、佐伯捜査一課長

の二人の視点が交互に描かれていきます。


松本は過去に何か大きな事件(後に娘をなくしたのだとわかります)

を抱え、その救いを宗教に求めていきます。

新興宗教との出会い、のめり込み、信じていく過程、

その狂信ぶりがサクサクと書かれていきます。


一方、佐伯は血縁関係による大きすぎる期待を一身に背負い、

冷え切った妻子との関係に悩みながら捜査に取り組みます。

警察署内での軋轢、家庭の問題、愛人との関係、

普通の人間が持つリアルな悩みが丁寧に書かれます。


さて、話が進んでいくうちに、松本が自分の娘を生き返らせるために

幼女を誘拐、生贄として捧げていることがわかってきます。

追う佐伯、逃げる松本、そして狙われる佐伯の娘。

いやがうえにも盛り上がっていきます!

そして松本の毒牙が娘にかかるすんでのところで

「もう、おやめなさい。佐伯さん」

へいへーい!どういうことだよ説明しておくれよー:(;゙゚'ω゚'):


これは佐伯=松本の叙述トリックでした。

佐伯の義父が佐伯純一郎、つまり佐伯が婿養子だと

わかった時点でちょっと感づいちゃいました。

さらに佐伯=松本が左利きだということが、

妻、美絵が右頬を殴られたことなんかからもわかります。
多分他にもいっぱい伏線があったんだろうなー。


事件経過をまとめるとこんな感じ


H2.10月→香川雪穂

H2.12月→斎藤奈緒美

H3.2月→多田粧子

H3.3月→佐伯恵理子

(以上犯人不明、佐伯たちが事件を追っていた、偶数章)

H3.10月→山本万里子

H3.12月→太田さなえ

H4.2月→桂美子

(以上犯人佐伯。奇数章)


だったんですね!ふむふむ。


作品全体の印象としては、何か中途半端。

警察の軋轢や、家庭の問題、リアリティのある人物描写に

重きを置いているにしては、偶然が重なりすぎてる犯行日時。

あまり感じられない佐伯の娘への愛情。

いきなりフェードアウトする教団関連の人達。

ミステリーに徹し、余計な描写を排除しているにしては、

トリックそのものが若干弱く、

依然として犯人が不明のまま終わるのはやきもきする。


とても文章が読みやすく、ぐいぐい引き込まれただけに

最後の肩透かし感がちょっと残念でした。

しかし、小難しいアリバイや、密室なんかは登場しないので、

軽い気持ちで読めるところは大いに満足!