- 慟哭 (創元推理文庫)/東京創元社
- ¥780
- Amazon.co.jp
さて、三連休如何お過ごしですか。
もう本を読むくらいしか現実逃避できません。
不採用通知がなんじゃ!転職がなんじゃー!
無関係な叫びが入ってしまいました。お詫びします。
本日は貫井徳郎さん『慟哭』をご紹介。
これ一時期ヴィレッジヴァンガードでえらい推されてた記憶が。
で、勢い込んで買ってみたものの、「字、小っさ!」と
思ってずっと積ん読状態でした。もう6、7年前かな。
作者の最高傑作と誉れも高いので、改めて読んでみました。
読んでみて、字の小ささなんか気にならないくらいのページターナーぶり、
処女作らしいですが文章は非常に読みやすいです。
遅読な私が1日で読んじゃうくらいだから相当のもんです。
では、以下ネタバレ感想行ってみましょ!
本書は、
奇数章→新興宗教に嵌っていく無職の男、松本
偶数章→連続幼女誘拐事件を追う、佐伯捜査一課長
の二人の視点が交互に描かれていきます。
松本は過去に何か大きな事件(後に娘をなくしたのだとわかります)
を抱え、その救いを宗教に求めていきます。
新興宗教との出会い、のめり込み、信じていく過程、
その狂信ぶりがサクサクと書かれていきます。
一方、佐伯は血縁関係による大きすぎる期待を一身に背負い、
冷え切った妻子との関係に悩みながら捜査に取り組みます。
警察署内での軋轢、家庭の問題、愛人との関係、
普通の人間が持つリアルな悩みが丁寧に書かれます。
さて、話が進んでいくうちに、松本が自分の娘を生き返らせるために
幼女を誘拐、生贄として捧げていることがわかってきます。
追う佐伯、逃げる松本、そして狙われる佐伯の娘。
いやがうえにも盛り上がっていきます!
そして松本の毒牙が娘にかかるすんでのところで
「もう、おやめなさい。佐伯さん」
へいへーい!どういうことだよ説明しておくれよー:(;゙゚'ω゚'):
これは佐伯=松本の叙述トリックでした。
佐伯の義父が佐伯純一郎、つまり佐伯が婿養子だと
わかった時点でちょっと感づいちゃいました。
さらに佐伯=松本が左利きだということが、
妻、美絵が右頬を殴られたことなんかからもわかります。
多分他にもいっぱい伏線があったんだろうなー。
事件経過をまとめるとこんな感じ
H2.10月→香川雪穂
H2.12月→斎藤奈緒美
H3.2月→多田粧子
H3.3月→佐伯恵理子
(以上犯人不明、佐伯たちが事件を追っていた、偶数章)
H3.10月→山本万里子
H3.12月→太田さなえ
H4.2月→桂美子
(以上犯人佐伯。奇数章)
だったんですね!ふむふむ。
作品全体の印象としては、何か中途半端。
警察の軋轢や、家庭の問題、リアリティのある人物描写に
重きを置いているにしては、偶然が重なりすぎてる犯行日時。
あまり感じられない佐伯の娘への愛情。
いきなりフェードアウトする教団関連の人達。
ミステリーに徹し、余計な描写を排除しているにしては、
トリックそのものが若干弱く、
依然として犯人が不明のまま終わるのはやきもきする。
とても文章が読みやすく、ぐいぐい引き込まれただけに
最後の肩透かし感がちょっと残念でした。
しかし、小難しいアリバイや、密室なんかは登場しないので、
軽い気持ちで読めるところは大いに満足!