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本日は綾辻さん『殺人鬼Ⅱ』です。
新潮社、角川から文庫が出ているそうなので、
買われる方はそちらをどうぞ。
もしかして最初に双葉社から出たから双葉山の殺人鬼なのか?
ちなみに前作『殺人鬼』の核心に触れる記述があるので、
未読の方はそちらを先に読んだほうがいいと思います。
さて、前作『殺人鬼』はスプラッタミステリーの名を欲しいままにしていましたが、
今作でもものすごい量の血が流れます。
もう始まりからフルスロットルです。
普通300ページくらいのホラー、ミステリーだったら
70~100ページくらいいったところで
第一の殺人が起こる感じだと思いますが、
この本では17ページに殺人鬼がひょっこり出てきて、
25ページで最初の犠牲者が死んでいます。
仕事が早いです。殺人鬼さん。
さて、ではネタバレ感想いってみよ!
今回もミステリーとして読んだ場合、
トリックは言わずもがなの叙述です。
複数の人間を一人の人間だと思わせるトリックですね、
双葉山の殺人鬼、曽根崎壮介、白河和博
をただの『殺人鬼』と表現し、同一人物だと思わせています。
そう考えると『殺人鬼』というタイトルと設定は
非常に叙述に使いやすい設定ですね!
そのトリックの違和感は
・殺人鬼らしくないナイフを所持している
・ベッドに寝ていた和博の死体が靴を履いている
・斧を上段の構えに持っている
などから感じられますし、とてもフェアに書かれています。
私も和博の死体だけ布団をかぶせられ、
靴を履いているのはおかしいなぁと思っていたのですが、
布団の下に殺人鬼が現れていきなり飛び出してくるんじゃ・・・
というB級ホラー展開を想像していたので
まったく入れ替わりには気づきませんでした。
前作から殺人鬼は他人の心に入り込めるという情報があったので、
動けない和博が動き出したら面白いのに…と思っていながら
まんまと騙されてしまったのは非常に悔しいです。
ザ☆殺人鬼っぽいキャラのヤク中曽根崎壮介も
何らかの形で絡んできているとは思っていましたが、
あまり印象に残らないままフェードアウトしてしまいました。
叙述トリックとしては、もちろん成立していますし、
テレパシーや意識の入れ替わりなど超自然的ガジェットはありますが、
きちんとつじつまを合わせようという努力が伺えます。
本人も書いているように「ホラーで茶を濁すな!本格書け!」
という批判はあるでしょうが、これはこれでフェアですし
きちんと本格してると思いますよ。
驚くかどうかは別として。
ホラーとして見てみた場合
今回も感情移入がまだ出来ていないモブキャラが
次々と殺されていくので凄惨な光景とはうらはらに
ぽかーんと置いてけぼりをくらった感じでした。
しかし、主人公真実哉の感じる恐怖、焦燥や
姉、愛香の動揺し、逃げ怯える様子などは
前作のように気づかないまま殺人が進行しているよりかは
緊迫感をうまく演出していました。
総じて、綾辻さんお得意の「じとっとした恐怖」は味わえず、
館シリーズのミステリアスな雰囲気が好きな私としては欲求不満が残ります。
しかし、「もうとにかくなんでもいいから血を!事件を!」と
むしゃくしゃしているときに読むとすかっとすると思います。
分量も多くなく、文章も平易なので読みやすいと思います。