- 未明の家 建築探偵桜井京介の事件簿 (講談社文庫―建築探偵桜井京介の事件簿)/講談社
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ミステリに館は非常に大事。篠田さんの意見非常にワカル!
私がミステリーに本格的にはまったきっかけは(ゴッド島田荘司は別格として)
綾辻さんの『十角館の殺人』でした。
不気味な雰囲気を持った館を中心に巻き起こる惨劇を
期待に胸を膨らませて読んでいました。
明治・大正の貴族か、はたまた晩年に狂った資産家の老人か…
彼らの建てた館で起こる殺人は、四畳半アパートで起こる殺人よりも
遥かにミステリアスで、ドラマチックなかほりがします。
さて、この建築探偵シリーズですが、
探偵役を務めるのは近代建築を学ぶ大学院生・桜井京介さん。
そのすれ違った女性の99%が振り向くという美貌を、
長い前髪と眼鏡で覆い隠す…という中二か!と思えるほど素敵な設定。
事件は熱川にある『黎明荘』という別荘を中心としたお話。
その別荘は中央のパティオがまるで牢獄のような閉鎖空間になっており、
そこで晩年を過ごした老人と、その息子家族の確執が事件の核。
以下事件をまとめてみますが、解説にも書いてある通り、
誰が犯人なの!?っていうのを
アリバイがどうの…と緻密に解き明かす話ではないです。
(もちろん推理は本格物ですのでご安心を)
それよりかは、ミステリーを中心として、
館自体の持つ謎、その館に住んでいた人の隠された秘密
そういったものを暴き、かつそれらが主人公の過去に還元されていく…
という性格を持った話運びです。
■遊馬歴の死
床に倒れているところを発見される。詳しい死因不明。
当時は事件性は薄いと判断される。
実際は息子、灘男と口論になった際の事故死。
娘の珊瑚が父をかばっていた。
■遊馬灘男の刺殺未遂
不自然に自分の腹を刺し、自殺未遂をした灘男。
真相は、肖像画にサファイアがあると思い込んだ珊瑚が
勢い余って刺してしまったというもの。
この家はドジっこばっかりか!
■醒ヶ井玻瑠の死
椅子から転んで噴水の座石に頭をぶつけて死亡。
真相はブルーサファイアを横取りしようとした醒ヶ井に、
珊瑚が小石をぶつけたら落ちて死んじゃった!というもの。
この人たちほんと頭の打ちどころとか悪いよね…。
という事件ですが、事件の解決はあまり重要じゃないです。
重要なのは歴の過去とこの屋敷に対する思い入れですね。
彼は留学中に『月(LUNA)』と呼ばれる女性を愛しましたが、
彼女は死んでしまいます。意気消沈した彼は
彼女の代わりともいえる白馬(黎明号)をかわいがります。
しかし、その愛馬も死んでしまい。あとは死を待つだけになりました。
あとはもう悲惨。好きでもない女と結婚させられた腹いせに
息子に『虚無(NADA)』とかいう名前を付けるわ、
孫は放置だわ、かといって理緒だけ誕生日が一緒か知らないが
特別にかわいがるわ…。ほんとガキかよと言えるくらい迷惑な存在。
息子の灘男さんもたいがいな人だと思うけれど、これはホントかわいそう。
珊瑚の肩だってもちたくなります。
なのに彼女の影があまりに薄いよ…。
最後に桜井さんは『NADA O』つまり『虚無 もしくは』
という意味があったんじゃないかと言ってくれますが、
そんなんで五十何年も苦しみぬいた人が安直に救われてなるもんか!
と意固地になってしまいました。
さて、最後にお遊びのコーナーですが、
今回の役者当てはめは適当すぎます。
桜井さん→櫻井翔さん。はいそうです。名前で安直に決めました。
でも『黄色い涙』あたりの小汚い感じとかそれっぽいのでは…。
蒼くん→本郷奏多さん。ちょっと生意気そうな感じが?
深春さん→照英さん。おいおい、照英さん馬鹿にしちゃいけない。
『星獣戦隊ギンガマン』の彼は理想の男性だぜ!
というわけで、非常に期待して読んで、実際面白かったし、
桜井さん、蒼くん、深春さん、その他朱鷺さんなどキャラもよかったけれど
なんかもやっとしたものが残ったシリーズ一作目でした。
でも次の作品もきっと読んじゃうと思います。
みんなの過去が気になるものー!