ダークゾーン/祥伝社
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んひほーう!虎の子の貴志先生の作品、

『ダークゾーン』を読み終わりました。

前評判を聞く限り「『クリムゾンの迷宮』みたいなゲームもの」

とあったので、非常に楽しみにしてました!

ハリーポッターしかり、映画『シャーロックホームズ シャドウゲーム』しかり

世にも奇妙な物語『チェス』しかり、擬人化チェス(チェス化人?)

となって頭脳戦を繰り広げる話は大好きです。


ではネタバレ感想いってみよ!


暗闇の中で目を覚ました奨励会三段の棋士塚田は、

自分の中に戦い続けなければならないという衝動を感じる。

自分は赤の軍勢のキングとなり、

彼女や知り合いがその持ち駒となってしまっている異様な空間。

その中で、青のキングとなったライバル奥本と7番勝負を戦うことになった。


最初は駒の名前や特徴が分かりづらくてイメージしにくいですが、

太文字にしてくれていたりきちんとルビを振ってくれていたり

わかりやすいようにきっちりと配慮されているので

それぞれのキャラクターが徐々につかめてきます。

7番勝負なわけですから、三勝三敗にもつれ込むのは

予想できますが、一戦一戦この戦いは勝つのか?負けるのか?

で本当にひやひやさせられます。


先が知りたいのに、勝つか負けるかのプレッシャーで

読む速度が落ちてしまったのはこの本くらいです…。

それくらい読者を引き込む文章力が貴志先生の

エンタメ界の鬼才と呼ばれる所以でもあると思います。


しかし、ほかの方のレビューでもちらちらありましたが、

いかんせんただただ戦っているだけなので

途中でだれてきます。

そうならないように貴志先生も速攻や籠城戦、昇格など

様々なゲーム的要素を入れて盛り上げてくれてるんですけどね…。


私は当初、天才棋士塚田による頭脳戦が繰り広げられるのかと思っていましたが、

そんなことはなく、塚田さんは右往左往し、作戦ミスを繰り返し

力技で勝ったり、運に助けられて勝ったりします。

確かに奇策を講じて勝利する場面もあるっちゃあるんですが、

どうもスタイリッシュではなくてそこが残念…。


『ダークゾーン』での戦いの場面の合間に、

現実世界(?)でのとある事件が描かれます。

そこでは塚田ホントダメ男…。

プロになれないのは自分の才能や努力が足りないのだと認めようとせず、

恋人につらく当たり、挙句の果てに妊娠させ、母子ともども誤って殺し…

かつてのライバルさえ手にかける最低な野郎です。

『ダークゾーン』というのは塚田が夢見た、戦い続ける夢空間が実現した場だったっていう話なのかな。


設定が好みだっただけに

貴志先生ならもうちょっとうまく料理できたんじゃないの?

と思ってしまいます。

文句たらたら書いちゃいましたが、この分厚さにもかかわらず

2日で読めちゃうくらい面白かったので文句なしの★4つです。

次回作といわれている『スズメバチ』も楽しみじゃー。