若きウェルテルの悩み
八月二十二日
不幸だ、ウィルヘルム、
活動力は調子が狂って
落ち着きのない投げやり状態に陥り、
のんきにしていられず、
そうかといって仕事もまったくできない。
表象力も持たない、
自然にたいしても無感覚、
本は思ってもいやだ。
自分というものがなくなってしまうと、
すべてがなくなってしまう。
正直な話、
ぼくはよく日雇い人足になりたいと思う。
そうすればせめて朝眼をさませば
その日一日を過す目当てがあり、
一つの欲求、一つの希望が持てるからね。
ぼくはよく、
書類の山にうずまっているアルベルトを
うらやましく思うことがある。
・・・・・・中略
いつもそのあとで思い返して、
あの馬の話なんかを考えてしまうと、
もうどうしていいかわからなくなる。
――自由に飽きて鞍と馬具をつけてもらったはいいが、
乗りつぶされるっていうあの馬の話さ。――
ひょっとすると
ぼくが現在の境遇を変えたがっているというのは、
内心の不安な焦燥の現われなのじゃあるまいか、
だとしたら、
その焦燥感はたとい境遇が変わったって
ぼくにつきまとってくるだろう。
不幸だ、ウィルヘルム、
活動力は調子が狂って
落ち着きのない投げやり状態に陥り、
のんきにしていられず、
そうかといって仕事もまったくできない。
表象力も持たない、
自然にたいしても無感覚、
本は思ってもいやだ。
自分というものがなくなってしまうと、
すべてがなくなってしまう。
正直な話、
ぼくはよく日雇い人足になりたいと思う。
そうすればせめて朝眼をさませば
その日一日を過す目当てがあり、
一つの欲求、一つの希望が持てるからね。
ぼくはよく、
書類の山にうずまっているアルベルトを
うらやましく思うことがある。
・・・・・・中略
いつもそのあとで思い返して、
あの馬の話なんかを考えてしまうと、
もうどうしていいかわからなくなる。
――自由に飽きて鞍と馬具をつけてもらったはいいが、
乗りつぶされるっていうあの馬の話さ。――
ひょっとすると
ぼくが現在の境遇を変えたがっているというのは、
内心の不安な焦燥の現われなのじゃあるまいか、
だとしたら、
その焦燥感はたとい境遇が変わったって
ぼくにつきまとってくるだろう。