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山川徹 著

「初恋の味」はどこからきたのか?
カルピスは、「初恋の味」として知られる国民飲料だ。ルーツは、モンゴル高原で遊牧民に食されていた乳製品。約100年前に三島海雲によって発見された。

三島は僧侶にして日本語教師、さらには清朝滅亡で混乱下の大陸を駆け抜けた行商人だ。日本初の乳酸菌飲料を生み出し、健康ブームを起こした。

没後、半世紀近く経ち、三島の名は忘れ去られた。会社も変わった。だが、カルピスは今も飲まれ続ける。三島からすれば本望かもしれない。「国利民福」を唱え、会社の利益よりも国民の健康と幸せをひたすら願った。

 

 妻の病気で帰国後、あの味を求めて研究を進め生まれたのがカルピスであった。カルシウムの「カル」と仏教用語の醍醐だいごを意味する「サルピルマンダ」を統合させた「カルピル」という三島の案が、最終的に「カルピス」になった。一九一九年七月七日がカルピスの誕生日。宣伝巧みに大正期の健康ブームに乗り普及する。

 吃音きつおんに悩み、娘二人を病気で失い、虫眼鏡でヘソを焼く健康法を編み出し、ダンヌンツィオやムッソリーニに手紙を出す。豪胆な人生に繊細な一面ものぞく。「初恋の味」というあの宣伝文句が当時公序良俗に反すると警察から申し入れがあった事実も明らかにされる。日清・日露戦争を含む日本の大陸進出という背景が全篇ぜんぺんを覆っていることも重要だ。世界史的にもメチニコフがヨーグルトを長寿に有用と西欧に広めた時代と重なり興味深い。三島から垣間見える歴史は広く、重い。著者自身、内モンゴル自治区まで調査に行き、食べたあの味が、三島海雲の人物像に肉付けを与えている。カルピスの季節にぴったりの旅行記でもある。


カルピスの聖地・モンゴル高原まで訪ね、規格外の経営者の生涯に迫った傑作人物評伝。

キルギスに旅行に行った時に パオに宿泊して、ヨーグルトやチーズやバターなど手づくりの乳製品を食べたことを思い出しました。