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ルータ・セペティス 著 野沢 佳織 訳

第二次大戦末期,ナチス・ドイツは,ソ連軍の侵攻迫る東プロイセンから,バルト海を経由して住民を避難させる〈ハンニバル作戦〉を敢行した.豪華客船,ヴィルヘルム・グストロフ号も一万以上の避難民をのせて出航したが,ソ連の潜水艦によって撃沈され…….海運史上最大の惨事を,四人の若者の視点で描く歴史フィクション.
第二次世界大戦中、ドイツの支配下にあった東プロイセンで、事情を抱えた若者4名が、のちに世界最大の沈没事故を起こす船『ヴィルヘルム・グストロフ』に乗船する。4人それぞれの視点から話が進む。 ドイツの敗戦が見えつつ、ソ連軍からの攻撃は読んでいて胸が痛い。 9000人以上が犠牲となった沈没は、規模は異なるがタイタニック号を思い出す。 話の重さとは対照的に、どんどん引き込まれていき、読むことができる。
ソビエト軍から自国民を逃がすためにドイツが立てたハンニバル作戦。若者4人の視線で交互に描かれるこの物語は看護師、兵士、15才の少女、孤独な少年、靴職人、老女、盲目の少女。7人で助け合いながら港を目指す。そこに〈ヴィルヘルム・グストロフ号〉の水兵が加わる。リトアニア人の21才の看護婦、ポーランド人の15才の少女、東プロイセン人の若者、ドイツ人の17才の水兵の四人の独白で進む、戦争に翻弄されたひとりひとりの哀しみ、怒り、平穏だった頃の思い出がぎっしり詰まっているとても奥行きのある作品でした。命からがらの切羽詰まった状況の中、詩人と呼ばれる靴職人の人格と詩人と孤児の結びつきは暗鬱な物語の中に人間の強さ、優しさを感じさせてくれました。