『縫いながら、紡ぎながら』 パリの社交界にデビューしたイリス31歳はクチュリエとして成功できるか | ・・・   旅と映画とB級グルメ と ちょっと本 のブログ

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黒とターコイズブルーの、カラーブロックのワンピース。ちょっとヴィンテージのクレージュっぽい雰囲気のある、キルティングを施したラウンドカラーの半袖ワンピースで、後ろ身頃にはバックベルトをつける>。
 
 主人公のイリスが服飾学校の入学試験のために制作した洋服だ。
 
 オートクチュールの世界を描いた作品といえば、有吉佐和子『仮縫(かりぬい)』を思い出すが、こちらは、本場パリが舞台。
 
 イリスは、パリから列車で3時間ほどのところに、医師である夫と二人で暮らす31歳の女性。保守的な考え方の両親に育てられ、クチュリエ(服作り職人)になる夢を封じ込めたまま結婚し、銀行に勤めていた。しかし、あることがきっかけで夫を残し、単身パリのプライベートな服飾学校の養成コースに入学する。このメゾンの女主人マルトは、元モデルでココ・シャネルを思わせる美しくエレガントな女性。イリスは、マルトに才能を見込まれて援助を受け、数々の名だたるメゾンで仕事をしてきた教育係フィリップの特訓課題をこなしながら、彼女の色に染まっていく。田舎の中流家庭のパーティーしか経験のないイリスが、パリ社交界のパーティーに招待され、顧客を得ていく夢のような毎日。どれもが素敵な世界で、お洒落(しゃれ)なフランス映画を観(み)ているように読み進める。
 
 「洋服」を主体にした話かと思いきや、マルトの亡くなった夫の後継者、名うてのプレイボーイ、ガブリエルの登場で、遅ればせながら、恋愛小説だと気付く。中盤以降、思いがけないサスペンス仕立ての展開で物語が加速し、好きな人、好きなことと共にある人生に思いが巡る。著者は、フランスで全著作累計300万部を
売り上げるベストセラー作家。ディテールまで伝わる翻訳で読みやすい。人との接触もままならないコロナ渦中で、一時現実を忘れさせてくれる小説。徳山素子訳。
フランス人らしいおしゃれな大人の恋愛とクチュリエとしての成長記録ですね。