新国立劇場バレエ団の『ホフマン物語』を観てきました。
「元気なうちに古典バレエの名作を全幕きちんと観る」計画とは別枠です。
ホフマン? えっ?何? バレエなの?という好奇心でチケットを買っちゃいました。
文化予算内での慎重な作品選びを決意するも、すぐ「ま、いっか」の誘惑に負けてしまうのよね……。
オッフェンバックのオペラ『ホフマン物語』はよく知られていますよね。ことに「ホフマンの舟歌」の美しいメロディは、フルートで演奏されることもあります。
そのオペラを基にバレエの『ホフマン物語』が制作されたのは1972年のことです。英国スコティッシュ・バレエ団によって、グラスゴーで初演されました。
日本では2015年に新国立劇場で、舞台装置や衣装など一新して上演され、2018年に再演、今回が3回目の上演なんですね。
古典バレエと違って、しっかりと物語のあるバレエでした。
主人公は詩人のホフマンさんです。
彼は、騙されて人形を愛してしまったり、騙されて恋人を死なせてしまったり、悔い改めて神への愛を誓ったのに、妖艶なダンサーに誘惑されてあっさり神を棄ててしまったり、いい年のオジサンになっても策略にはまって、推しのオペラ歌手に振られちゃったり、さんざんな「騙され人生」を歩みます。
ホフマンさんを騙したり、そそのかしたり、欺いたりする人物は、どうやら悪魔のようです。
高笑いしながら去っていく悪魔らしき人物を見送って、ホフマンさんはガックリ気落ちして幕…なのですよ。
えっ? こんなお話なの? 楽しいバレエじゃないの?
とても演劇的なバレエなのですが、ボーッと生きてると悪魔の誘惑にまんまと乗せられて、とんでもない人生を歩むことになる、って話をなぜバレエで表現するのかしらと…。
ちなみに、オペラの『ホフマン物語』では、人は弱いもの、何度も誘惑に負けてしまうけど、神さまはずっと見守ってくださってるという希望が、ちゃんと終幕に用意されているのですが、バレエでは、その前に終わってしまいます。
人生、そんな甘いもんやおまへんでーってね。
キリスト教では「わたしたちを誘惑に陥らせず、悪よりお救いください」と、毎日、神さまにお祈りします。
悪魔は日常の至るところに潜んでいて、わたしたちを誘惑するのですよ。
なるほど…。
四旬節に入ったし、自分を振り返りなさいってことだったのね。