東京芸術劇場でNODA-MAPの『兎、波を走る』を観てきました。
『兎、波を走る』はことわざで、月影が水面に映っているさまのたとえ。また、仏教の悟りにおいて、浅い段階にとどまっている人のたとえ、だそうです。
…で、舞台では、白い衣装の、じっと見ると兎には見えなくて、パッと見ると兎に見えるものたちが走り回っておりました。
動きも速いし、セリフも早口で、やっぱり婆さんにNODA-MAPは無理だったかと諦めの幕開けでしたが、滑舌の良い役者さんたちが揃っていて、なんとかついていけました。
そもそも、正面席とはいえ、2階の一番奥からの観劇だったのですよ。
お芝居のテーマは「不条理」です。
なので理屈で理解するのは無理!(韻を踏んでみました♪)
「もう、そうするしかない国」に拉致されたアリスと、突然いなくなったアリスを探す母親の、どうにも解決しない物語なのです。
鏡を使った舞台空間では、生の役者と鏡に映った役者の見分けがつかないし、三里塚闘争のニュース映像が脈絡なく挿入されて、ますますワケのわからない展開になり、現実にも、この拉致問題が解決されないことを知っている観客たちは、物語に結末のないことを薄々感じつつ、でも、どうにか落とし前をつけてもらいたいな~と願う終盤、アリスの「おかあさーん」と何度も何度も必死に泣き叫ぶ声が劇場に響き渡ります。
横田めぐみさんは、まだ、おかあさんのところに帰ってきてはいません。