三月大歌舞伎を観てきました。
第一部の『花の御所始末』です。
シェイクスピアの戯曲『リチャード三世』に着想を得て、宇野信夫が六代目市川染五郎(今の白鴎さん)のために書き下ろし、昭和49年に帝国劇場で初演された新作歌舞伎です。その後、昭和58年に新橋演舞場で再演されています。
それから40年を経て、初めての歌舞伎座公演です。主人公の足利義教役を松本幸四郎さんが演じます。
気合い、入ってますよね!
でもね舞台は…、ちょっと物足りなかったなー
シェイクスピアの描いたリチャード三世は身体的コンプレックスがあって、それゆえの成り上がり願望や、孤独が狂気を生み、ついには破滅に至る凄絶な人生に、共感はしないまでも、すごいもの観ちゃった的な感動がありました。
ところが宇野信夫の『花の御所始末』では、主人公の足利義教はイイ男だし、恵まれた環境で育ったみたいだし、ワガママで気性が荒いってだけでは殺意に説得力がないのですよ。
40年前には、イイ男の殺意に意外性があったのかもしれませんが、高校生が「人を殺してみたいと思っていた」と告白する時代には、インパクトが弱いかも…。
もちろん、幸四郎さんは熱演でしたし、黒幕的存在の芝翫さんが、裏切った主人公に恨みをぶつけつつも権力に固執する姿の、遠慮がちな歌舞伎的誇張にもジーンときました。(ここで大向こうだろっ、と思ったけど掛からなかった…)
私たちは今、理不尽な死をとても身近に感じています。
主人公の狂気ではなく、去年の大河ドラマみたいに、正しいと信じて歩んできた人が殺される、その理不尽な最期にスポットを当てたほうが感動を呼ぶのかも…。
ちなみに、私が一番感動したのは、この白馬の登場シーンです。

静止画では人間の足にしか見えませんが、動き出すと、上下する首と、前肢と後肢の運びが、まさしく馬のものでした。
歩様を見て、これは軽速足(けいはやあし)をしていると分かるんです、そして乗り手の腰が上下しないことのほうに不自然さを感じましたよ。
馬は後肢の動きが前肢に伝わって、腰が波のように動きますが、この馬の脚は別々の人のものでつながってませんから、ま、仕方ない…。
(※写真はヤフーニュースさんからお借りしました)
そして、客席での飲食オッケーになって、めでたいっ!