大型書店に行く時間がなかなかなくて、2階で食料品以外の衣料や雑貨も売っているようなスーパーマーケットに立ち寄ってもらったついでに、そこの本屋の品揃えを覗いてみるということが、最近に何度かあった。
主に創元推理文庫とハヤカワ文庫の棚をチェックするのだが、どこの店でもハヤカワのクリスティー文庫などは超有名作品だけを置いてあるのが普通で、少しだけでも他のクリスティー作品を置いている店舗の場合は、余り売れないのか背表紙が焼けていたりして、とても淋しい限りだ。
にも関わらず、最近に立ち寄ったどの本屋にも置いてあったのが、創元推理文庫の「HHhH」で、ナチをテーマに斬新なメタフィクション的手法を駆使した傑作にして話題作らしく、以前から大型書店でも見かけて気にはなっていたのだが、ミステリではないと知りながら、頂いた図書券が残っていたこともあって、もしかしたら飛び切りトリッキーな作品かも知れないと思い、ついつい購入してしまった。
結果を言うと、確かに面白くは読めたものの、私にとっては、なるほど、玄人の評論家たちならさぞ絶讃するだろうなと思える程度の内容でしかなかったのだが、しかし、こんな特殊な本があちこちのスーパーの2階で売られているということ自体は、日本の読書状況にとって微かな希望であるのかも知れない。
願わくば、背表紙が焼ける前に、本好きな買い物客の誰かが、この本を手に取りますように。
おしまい。
※「ホームページ アジアのお坊さん 本編」もご覧ください。