江戸川乱歩「探偵小説の謎」のこと | アジアのお坊さん 番外編

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※各段落の頭文字を繋ぐと「たん・て・い・しょう・せ・つ」となるように工夫しました。

 

 

誕生日プレゼントに小学校の同級生が、近所の本屋さんで春陽文庫の「魔術師」を買って来てくれたことがある。

 

手品の本は実用書の棚にたくさん、探偵小説なら春陽文庫、角川文庫、創元推理文庫などが少しずつ、昔はどこの小さな本屋さんにも必ず置いてあったように思う。

 

今もその頃に買った本で持っているのは現代教養文庫の「探偵小説の謎」という乱歩の随筆集で、書店で立ち読みして感動して、意を決して何か月も経ってからようやく購入した。

 

小学生の私が「昔の探偵小説家、ことに英米、アングロサクソン系の作家が、いかに奇矯な手品的トリックを考え出したかというお話である」という第1章の書き出しに、「奇矯」も「アングロサクソン」も初めて聞く言葉ながら、暗記するほど魅了されたのが、昨日のことのようだ。

 

先日、「江戸川乱歩語辞典」という本の中で、ミステリ評論家の戸川安宣氏が好きな乱歩作品としてこの「探偵小説の謎」を挙げているのを見て、やはり世の中にはそういう人もいるんだなあと嬉しくなったものだ。

 

つい先日、何十年かぶりに生まれ育った町を訪ねたら、私が「探偵小説の謎」を買ったあの書店はもはや存在していなかったのだが、あれから幾星霜、第1章の「奇矯な着想」から最終章の名編「スリルの説」に至るまで、全部の文章が私にはたまらなく愛おしい。

 

 

                   おしまい。

 

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※各段落の頭文字を繋ぐと「たん・て・い・しょう・せ・つ」となるように工夫しました。