改めて八正道の話 | アジアのお坊さん 番外編

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旅とアジアと仏教の三題噺

台湾の佛光山が出している「自然環境と心の環境保護」(星雲大師講演録「環保与心保」の日本語版)という小冊子の中に、心身の環境保護のための12の努力徳目というものが載っている。

 

道にゴミを捨てないとか、禁煙して空気を汚さないといった項目もあるが、「静かに話す」「落ち着いた心身を保つ」「笑顔を心がける」「優しい言葉で話す」「落ち着いた生活をする」「規律を守る」「善の心を持ち、悪を行わない」といった徳目がほとんどで、詰まるところ、これらは八正道や十善戒、それに「和顔愛語」とも通ずる「無財の七施」などと言った、伝統的な仏教の実践徳目と、軌を一にするものだ。

 

さて、仏教の実践徳目の中でも特に八正道は、ブッダが悟りを開いて最初に説いた、基本中の基本の教えだ。最古の経典の一つであるダンマパダ(岩波文庫版では「ブッダの真理のことば」)やブッダ成道後最初の説法をまとめた「ダンマチャッカ・パヴァッタナ・スッタ(転法輪経」」(三橋ヴィプラティッサ比丘訳版では「如来所説 初転法輪」)や、仏教における坐禅瞑想の基本を説いた「アーナパーナ・サティ・スッタ」(三橋ヴィプラティッサ比丘訳版では「観息正念の教え」)にもその名が出て来る。

 

昔、インドのブッダガヤにある印度山日本寺に来られた旅行者の方で、仏教の基本って八正道ですよね? という質問を繰り返す方がおられた。要は八正道さえ実践してればいいんですよね? とばかり仰るので、若かりし私には付け足したいことも多々あったのだが、今思えば、「八正道さえ実践してれば良い」という考え方にも、一理はあると思う。

 

高校生くらいの時に初めて読んだ仏教書が中公新書の「佛教入門」(岩本裕著・絶版)だったのだが、その中にも「八正道は佛教の実践倫理の根本と言わねばならない」と書かれてあった。

 

プラユキ・ナラテボー師の単著第2作「苦しまなくて、いいんだよ。」(PHP研究所)の第1章には八正道の解説があって、「八正道は一部の項目ずつ実践するものではなく、現実の問題を根本的に解決していくためには、八正道のトータルな実践が大事なのです」といったことが書いてあり、四諦と八正道は補完しあうものであり、それを現実日常の問題にいかに応用して苦を解消するかという、具体的な方法論も説かれている(ちなみに同書には「無財の七施」の解説も出て来る)。

 

今さらながら改めて、八正道を普段日常の生活の中で、ごく当たり前に実践して行かねばならないなあと思う今日この頃。

 

 

         

                おしまい。

 

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