※先ずは、「マギンティ夫人は死んだ」について、各段落の頭文字を繋ぐと「く・り・す・て・い」となるように工夫しました。
くどいようだが中期以降のアガサ・クリスティー作品の魅力は、「悠々たる筆致」の一言に尽きると思う。
理屈っぽいガチガチの本格ミステリではないのに、散りばめられた手がかりや伏線が、最後に意外な結末に結びつく心地よさ。
推理と物語が程よく混ざり合うクリスティーの職人芸は、この「マギンティ夫人は死んだ」においても、一層、顕著だ。
定番とも言える中期以降クリスティー作品に頻出の「過去の事件が現在の事件と絡んでくるテーマ」なのだと読者が気づかされるのが、ハヤカワ文庫版で言えば100ページ目あたり。
一気にそこから残り300ページ、あっと言う間にクリスティーの語り口に導かれて見事な結末に至る、やはりこの作品も傑作だった。
※続いて公開中の映画・リメイク版「ナイル殺人事件」にちなんで旧作版の「ナイル殺人事件」について、頭文字を繋ぐと「ま・ぎん・て・い・ふ・じん」となる趣向で。
まんが祭り以外で、初めて劇場に足を運んだ映画が旧作の「ナイル殺人事件」だった。
銀幕でポワロを演じた俳優の内で、多分最も原作のイメージとは遠いピーター・ユスティノフのポアロも大好きだ。
手慣れた脚本は「探偵〈スルース〉」のアンソニー・シェーファー、流麗な音楽はフェリーニ作品や「太陽がいっぱい」「ゴッドファーザー」などで知られる名匠ニーノ・ロータ。
イギリス俳優は、ユスティノフ以外にマギー・スミス、ジェーン・バーキン、デビッド・ニーブン。アメリカからはベティ・デイビスにミア・ファローという錚々たる顔ぶれのキャスト。
不思議なことにケネス・ブラナーによるリメイク版も、往年のEMI版と同じく、「オリエント急行殺人事件」「ナイル殺人事件」の順番でリメイクされているので、もしかしたらブラナーも私と同じく旧作のファンだったのではなかろうかと思っている。
人生最初に見に行った映画が旧作版「ナイル殺人事件」、そしてその後、劇場、ビデオを含めて何十回も見ているこの映画が、クリスティー映画、ミステリ映画だけでなく、全ての映画の中で私の最も好きな作品だ。
おしまい。
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