京都寺町の仏教書専門店・其中堂(きちゅうどう)は、京都の書店特集などで紹介されることもあるとは言え、店内では法衣・作務衣・平服姿のお坊さま方をお見かけすることも多い、やはり特殊な本屋さんだ。
古書も少し置いておられて、今は絶版の中公文庫版「入唐求法巡礼行記」もここで手に入れたが、新刊でも仏教の専門書はここで買いたいという気持ちがあって、プラ・タカシ・マハープンニョ師(落合隆師)が日本語の書籍を出版された時も、すぐにここでお尋ねしたものだ。
そうしたら、問い合わせが早過ぎたものか、ご店主が、あー! まだなんですと、大変残念がって下さった。その後、無事購入させて頂いたのだが、生野善應師の「ビルマ佛教」を読み直そうと、前は置いてあったのになと思って尋ねた時も、あー! 池田正隆師の「ビルマ仏教」はここにありますが、生野先生のは今はオンデマンド版でしか、と教えて下さった。
先日、大竹晋氏の「セルフ授戒で仏教徒」を購入した時は店主のご子息がお店に出ておられたのだが、購入して一読後、これは大竹氏の前著である「大乗非仏説をこえて」も読まねばならないと思い、今回はご主人に、「セルフ授戒」が面白かったので「大乗非仏」も買うことにしましたと申し上げたら、店主が大竹先生の文章は繰り返しが特徴ですよねと仰られた。
ああ、確かに。
論理的に理詰めで畳み掛けるあの感じですねとお答えし、そして店を出てから思ったのだが、もしやこのご主人は、置いておられる全ての書籍を読破して、内容を把握しておられるのではなかろうか。
それでいて、個性ある書店の主人によくある偏屈頑固な気性ではなく、腰低く温厚で親切で、けれどなおかつ仏教書に造詣が深いお人柄なのだから、正に仏教徒の鑑のような稀有な書店主だなあと思った次第。
※本の表紙の上に、「仏教タイムス」に出ていた其中堂の広告を載せてみました。肝心の「大乗非仏説をこえて」の感想は、次回に書かせて頂きます。
おしまい。
※ 「ホームページ アジアのお坊さん 本編」もご覧ください。