インドの山岳仏跡 | アジアのお坊さん 番外編

アジアのお坊さん 番外編

旅とアジアと仏教の三題噺

先日、印度山日本寺の現役駐在僧の方が、ブッダガヤに近い、コレシュリという山に登った話をお聞きして、私も日本寺駐在当時、インドの山岳寺院をあちこち訪ねたことを思い出し、画像が荒くて恐縮ながら、古い写真を並べさせて頂くことにした。

 

こちらがコレシュリで見たサドゥー(ヒンドゥー行者)のクティ(庵)。

(詳しくは「ホームページ アジアのお坊さん本編 僧院と僧坊」を参照して下さい。)

 

ところで、インドの山岳仏跡と言えば、下の画像のラージギルの霊鷲山が有名だ。

 

霊鷲山はブッダガヤと並ぶ人気仏跡で、昔から観光客・巡礼者の多い所だ。一方で前正覚山はブッダガヤ中心部と近いので、今では「地球の歩き方」にも載るようになり、巡礼団体だけでなく、日本人バックパッカーの方も、よく訪れるようになった。こちらは私が日本寺から前正覚山まで何キロも歩いた時の画像。

 

 

さて、トラベルサライというインドに強い旅行会社は、手塚治虫の「ブッダ」にも出て来る象頭山(ぞうずせん)や、摩訶迦葉(まかかしょう)ゆかりの鶏足山(けいそくざん)のツアーも扱っていてすごいなあといつも思う。私はツアーではなく、昔、日本寺のインド人スタッフたちと一緒に自炊道具を持って鶏足山を参拝したのだが、写真についてはこちらの記事(「酉年にちなんで鶏足山の話」)を参照のこと。

 

その記事の中でも書かせて頂いたが、56億7千万年の未来に弥勒菩薩がこの世に出現する日まで、摩訶迦葉がこの山でブッダの遺品を預かって待っているという伝説があり、韓国の通度寺にある摩訶迦葉の奉鉢塔は、この伝説にちなんだものだし、星野之宣氏の漫画「宗像教授異考録」の中の「大天竺鶏足記」という短編にも鶏足山と摩訶迦葉が登場する。

 
また、大本教の出口王仁三郎が自身を弥勒菩薩になぞらえるのにあたって影響を受けた神道霊学者の大石凝真須美(おおいしごりますみ)はその著作の中で、鶏足山の出て来る弥勒菩薩下生経について触れているし、鶏足山と弥勒菩薩の伝説については、南方熊楠の「十二支考」の「鶏に関する伝説」にも詳しい記述がある。
 
そう言えば、ブッダガヤ日本寺同期のS師が初めて霊鷲山を参拝されて、自宗が奉じる大乗経典が、この場所でブッダによって説かれたのかと感動しておられた時に、大乗経典は歴史的にはブッダの時代より後に成立したのでは? と若かりし私が意地悪を言うと、分かってます、分かってます、分かってますけど、自然に涙が出て、泣けて来るんですから仕方ないんです! と仰った、それこそが仏跡を詣でる意味なのだと、今ならば思う。