酒井雄哉師のお噂 | アジアのお坊さん 番外編

アジアのお坊さん 番外編

旅とアジアと仏教の三題噺

お坊さんになりたての頃、私の宗派は天台宗なので、酒井雄哉大阿闍梨のお噂をよく耳にしたものだ(酒井師は2013年の9月23日にご遷化された)。

私の法名が酒井師に似ていなくもなかったことと、小僧修行させた頂いたお寺が、酒井師の拠点である飯室谷とちょっとご縁があったためか、よそのお坊さんに、あなたは酒井阿闍梨のお弟子さんですか? などと聞かれたこともあってから、私は酒井師のお名前を意識するようになった。

そして、酒井さんは熊野大峯奥駈け道や国東半島の六郷満山も歩きたいと仰っておられるんだぞと、偉いお坊さんたちに教えて頂き、托鉢行脚や巡礼に憧れてお坊さんになった私は、大いに興味をそそられた。

中国の五台山を巡礼後、慈覚大師の跡を慕って関東から東北の恐山まで行脚したかと思うと、一方バチカンではローマ法王と会見、もっと後にはモーゼが十戒を授けられたエジプトのシナイ山も訪れた酒井師。

千日回峰行を2度満行されただけでなく、歩くこと、巡礼行脚にこだわったそのご修行は、常に私には羨ましかった。

私は酒井師の講演を2度聞かせて頂いたことがある。1度目は2003年にグランキューブ大阪で、2度目は2009年に天台宗務庁大会議室での講演だったが、それぞれに印象深い。

大阪で覚えているのは、さて、今日は何のお話をしようかな、と言って話し出されたこと。自由にお話が広がることを予感させる独特の掴みと、飄々たる語り口に魅了された。

天台宗務庁の講演では、二千日の回峰中、最もつらかったのはいつですかと聞かれた阿闍梨さんが、それは最初の一日目だ、理由は何にも分からなかったからだと仰ったお言葉に、なるほどと思ったものだ。

私が持っている酒井師関係の本は、「一日一生」以外は師の回峰行中前後の古いものばかりだ。

先日、大型書店で酒井師関係の書籍の在庫を確認したら、一般向けの入門的な新書しか置いてなかったのだが、その中の「この世に命を授かりもうして」(幻冬舎新書)だけは、酒井師が死期を悟られてからのお言葉を集めたものなので、今でも読むのがちょっとつらい。

イメージ 1
※画像は2009年の講演時に求めさせて頂いた、酒井師署名入りの「一日一生」(朝日新書)です。




  是非ご覧ください!!