アガサ・クリスティ「五匹の子豚」の話 | アジアのお坊さん 番外編

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※各段落の頭文字を繋ぐと「ご・ひ・き・の・こ・ぶ・た」となるように工夫してみました。


ご存知エルキュール・ポワロが活躍するアガサ・クリスティ作品の一つである「五匹の子豚」を初めて読んだ。

比較的よく名前の知られた「オリエント急行殺人事件」や「アクロイド殺し」といった他のポワロ作品よりも知名度は低いけれど、完成度の高い名作であるということは、子供の頃から聞いていた。

昨日ようやく読み終えたのが私の初読であったのだが、これが予想以上に大変に面白く、細部に至るまでよく考えられた凝った構成を、堪能することができた。

残り100頁を切るくらいから、静かな物語展開であるにも関わらず、じわじわと感動と興奮がこみ上げてくる。過去に起こった殺人を、関係者への聞き取りと、彼ら5人(彼らがマザーグースの「5匹の子豚」に擬せられている)に書かせた手記から推理するポワロ。

このところ、子供の時に読んだクリスティのミステリを読み直すことから初めて、それだけでなく、あらすじは知っていながら、今まで読んだことのなかったクリステイ作品も、少しずつ読み始めている。

文量的にはずっとボリュームのある「葬儀を終えて」を先日初めて読み終えたばかりなのだが、この「五匹の子豚」はもっとコンパクトな体裁ながら、同様に細部まで実に面白く、ミステリとしての技巧と人物描写の楽しみを併せ楽しめる傑作ではあった。

「探偵する心」とういうものが、作者の人生観と分かち難く結び付いて独自の物語世界を形作っているという意味で、クリスティの作品と、一見、全く方向性が違うように見える、逆説や哲学に満ちたチェスタトンのブラウン神父シリーズを初めとするミステリ作品は、よく似ているように思えて、私にはとても好ましい。


※各段落の頭文字を繋ぐと「ご・ひ・き・の・こ・ぶ・た」となるように工夫してみました。

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