D坂の年頃 | アジアのお坊さん 番外編

アジアのお坊さん 番外編

旅とアジアと仏教の三題噺

文庫型の雑誌「文蔵」(PHP研究所)の2007年11月号江戸川乱歩特集という本を、たまたま古書店で見つけたので買ってみた。

巻頭がミステリ作家綾辻行人氏のインタビューで、好きな乱歩作品を聞かれた綾辻氏は、「D坂の殺人事件」などの初期短編は評価が高い割りに今読むとそれほどのものでもない、やっぱり乱歩の本領は、「孤島の鬼」や「芋虫」にあると仰っておられた。

もちろん、乱歩の初期本格短編の、当時における画期的な歴史的意義は我々以上に十分お分かりの上で、現代的な観点から見ても後世に残るべき文学作品としては、という意味で仰っているのだろうとは思うが、ふーん、プロの作家からすると、そんな見方も出来るんだと、むしろ新鮮な感じがした。

もとより「D坂」を、本格ミステリとして優れているなんて、思ったことはない。先に読んだ「心理試験」や「黒手組」や「魔術師」などの中に、やたらと「D坂」の名前が出てくるので、どんな話かと初めて読んだ時に期待したが、結末は拍子抜けしたし、明智小五郎の心理分析探偵法も詳しくは語られないままだし、それよりも初登場の明智小五郎の人柄が詳しく描かれていることこそが、この作品の魅力だと、子供心にも思ったものだ。

こんな人になりたいと、小学生の時に思った、25歳を越えてはいまいと描写された、「D坂の殺人事件」における、高等遊民時代の明智小五郎、ちょうど乱歩の「押絵と旅する男」の中で、押絵の娘はいつまでも若いままなのに、男は「根が寿命のある人間のことですから」段々と年を取るように、私もいつしか「D坂」の明智の歳をはるかに越えて…。
 
 
 
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