アジアのお坊さん的 京の冬の旅…京都 長講堂 特別公開 | アジアのお坊さん 番外編

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旅とアジアと仏教の三題噺

 普段は拝観できない、京都六条にある長講堂(ちょうこうどう)というお寺が、現在、「京の冬の旅 非公開文化財特別公開」の一環で公開されている。先日、知人を案内する用があって、初めてお参りさせて頂いた。

 山門をくぐっただけで、小じんまりした境内は、もう既に大変すがすがしい。玄関を上がった書院の縁側から見る小さな庭も美しく、玉座に掛かる後白河帝の掛け軸も、複写とは思えぬ迫力だ。

 本堂の阿弥陀三尊も、大寺院の本尊に劣らぬ圧倒的なお姿で、「法華長講弥陀三昧堂」と勅額に刻まれた正式な寺院名そのままに、ここが単なる御所、御座所ではなく、しっかりと仏道修行するために建立されたお寺であることが伝わって来る。

 さて、玄関を上がってすぐの所に、ブッダが悟りを開いた場所を記念する、インドのブッダガヤの金剛宝座から取った拓本が衝立にして展示してあった。また本堂には、ブッダガヤの仏足石の拓本も飾ってあり、廊下にはインド四大仏跡巡礼時の写真がパネルにして展示してあった。

 ブッダガヤの仏足石の拓本にはいろいろな種類があって、これにはこれでいろんな豆知識があるのだけれど、それはさて置き、金剛宝座の拓本というのは聞いたことがない。聖地の内の最も聖なる場所で、昔は拓本が取れたのだろうか。

 インドの仏足石の拓本事情に詳しい、ブッダガヤ日本寺時代の駐在同期、H師に尋ねたけれど、実情が分からない。ただ、この拓本の日付は、我々の駐在時代よりひと昔前のものだったので、以前は自由に拓本が取れていたのかも知れないが、それにしては金剛宝座の拓本の説明に、「世界でただ一つの拓本」とあるのが不思議だ。
 
 ともあれ、私としては、懐かしい金剛宝座の姿を目の当たりにしながら清々しいお参りができて、大変に充実した、京都の冬の旅ではありました。

                           おしまい。