スッバさんの話を書こうと思います。私よりスッバさんの生い立ちや人となりをよくご存知の方は何人もおられるとは思いますが、私は私が知っているだけの、スッバさんの話を書こうと思います。
インドの仏跡ブッダガヤに正覚山釈迦堂というお寺があって、このお寺は名古屋に本部のある大乗教という仏教団体のインド別院なのですが、ブッダガヤ大仏のあるお寺としても知られています。
マンガル・スッバ氏は、大乗教インド別院創立当初からの現地マネージャーでした。大乗教の宿坊には、「すべてのものは心に基づく」とか「悪をなさず善をなせば心が浄まる」といった、ダンマパダの章句を英語で書いた旗章が掲げられています。私の知り合いを、大乗教のその宿坊に泊めて頂いた時も、スッバさん夫妻は何かと親身に世話して下さいました。
5年ほど前、スッバさんに最後にお会いした時に、スッバさんは日本寺の昔の駐在主任だった三橋ヴィプラティッサ比丘のことを懐かしみ、今ではブッダガヤのお寺の雰囲気も変わりましたよと、微笑んでおられたものでした。
それからほんの少し後に、日本でスッバさんの訃報を聞きました。驚いて、その年にまた、ブッダガヤの大乗教を訪れると、寡婦が着る白い衣装に身を包んだスッバ夫人の自室に招かれたので、離れにある故人を祀った祠堂の中で、亡きスッバさんの回向のために、お勤めをさせても頂きました。
その後、ブッダガヤを訪れる度に大乗教にもお参りし、マダム・スッバにお会いします。そして、ブッダガヤ大仏と十大弟子像の建立は、僕のアイデアでもあるんだよと、はにかんで仰っておられた亡きスッバさんのお姿を、必ず思い出すのです。