青い色をしたタイの農民服・モーホムは、清貧を強調する仏教徒のタイ人政治家が着ていたことでも有名だが、エコ派のタイ人アーティストなどが着る傾向もあって、ちょっと日本における作務衣のポジションと似ているように思う。
もちろん僧侶の作業着だった作務衣とモーホムでは本来の意味合いが違うし、タイで在家の仏教徒が着る衣装としては、ちゃんと決められた白衣が別にあるので、モーホムのことを「タイの作務衣」と表現するのは正しいとは言えないのだけれど。
お坊さんの中にも、作務衣はもともと作業着なんだから、在家の一般人が着たって一向に構わないんですよと仰る方がたくさんある。確かに戒を受けたり、規定の修行を終えなければ着てはいけない訳ではないから誰が着るのも自由なのだが、お坊さんが着る時にはそれなりの矜持を持って着るべきだなあと思う。
作務衣の下にTシャツやトレーナーを着ることがあっても、お坊さんが私服でうろうろするよりは作務衣を着ている方がいいけれど、本当を言えば作務衣の下には襦袢や白衣、足元は白足袋と雪駄で、お寺参りではさり気に輪袈裟なんかも着用するのが礼儀かなと思う。
色合いを見ればお坊さんの作務衣姿と在家の方の作務衣との違いは歴然としている、と言いたいところだが、ここだけの話、お坊さんから見ても、本物のお坊さんかどうか区別の付かないきちゃない格好の方もいるので、作務衣の着こなしは本当に要注意だと思う。
料理人、伝統工芸家、エセ宗教家に勘違い気味の長老宗教学者、料理屋や居酒屋の店員から、甚平がわりに浴衣の彼女と一緒に歩く若者に至るまで、有象無象が作務衣を着たがるので、事態はとてもややこしい。モーホムも同じ状況にあって、アジア好きの日本人の方がついつい着たくなってしまう感覚はよくわかるのだが、一歩間違うと大変痛々しいので要注意。ちなみに私は量販店の派手な作務衣を着てインドを旅している日本人を、何人も見たことがあります。
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