子どもの頃、国語辞典の「鳳凰」や「鬼」や「河童」といった項目の挿し絵を見るのが好きだった。また、小学校の図書館にあった「なぜなに百科事典」という本を見るのも好きで、そこには昔の人が考えた、世界の果ての絵なども載っていた。それは水平線の向こうが滝になっていて、深みに魔物が住んでいるような絵だった。
子どもたちの間でも、神さまって本当にいると思うか? という議論がなされることもあったが、我々は漠然と、白い髭を生やした西洋風の神さまを想像していたように思う。
小学校の低学年の頃、幽霊やお化けが怖くて、ドラキュラには十字架やニンニクのような弱点があると知って喜んだ。あるいは骸骨のおもちゃを持っていたら、年長の子どもたちに、そんな物を持っていたら呪われるぞと脅されて、呪いとは何なのかと、疑問が噴出した
高学年の頃、学校の怪談なるものは、「噂が噂を呼ぶ」ことがその正体ではないかと思い、友達と一緒に新しい怪談を捏造してみたが、演技力に欠けていたためか、噂は一向に広まらなかった。
高野山の林間学校でもらった冊子に五輪塔の説明があり、5つの文字が宇宙を表していると書いてあったので驚いた。文字で宇宙を表現できるとは!
高校の地理の教科書に載っていた、古代の世界地図の中に、ギリシャ人の考えたオケアノスの絵があった。海洋が大陸を丸く取り囲むこの世界観こそが、子どもの時に見た世界の果ての絵の原型に違いないと気づいたその頃から、私は忽然と宗教や伝説の研究をし始めた。出家してお坊さんになったのは、まだもう少し後のことだ。
「アジアのお坊さん」本編もご覧下さい!!