台湾の茶坊、韓国のカフェ、京都の茶寮…おまけにタイの煎茶と大阪のチャイ屋 | アジアのお坊さん 番外編

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旅とアジアと仏教の三題噺

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 伝統的な家屋を利用したカフェ、という形態は、もう日本では目新しくないけれど、例えばソウルでも仁寺洞(インサドン)あたりには、昔の家をカフェにしたり、今風なカフェで韓国の伝統的な茶菓を出したりする店が増えている。台湾の茶坊や茶館も、緑の多い郊外のカフェ風の店や、伝統家屋をアレンジした店が流行りのようだ。

 台北の王徳鎮や嶢陽茶行などのお茶屋さんにもカフェが併設されているが、京都でも俵屋吉富、鶴屋吉信、京都虎屋、阿闍梨餅の満月などの和菓子屋さんや、一保堂などのお茶屋さんには、お茶が飲めたり、カフェを併設しているところがあり、その多くは茶寮とか菓寮と呼ばれている。

 京都今宮のあぶり餅の一和は昔の茶店の雰囲気をよく残しているが、同じく京都北野の粟餅屋も、目の前でこねてくれた絶品の粟餅を食べながら、ゆっくり坐ってお茶が飲める昔ながらの茶店だ。桂米朝師の落語には茶店を出た旅人のこんな会話が出てくる。

喜六「あ、あんな茶二杯で八文もするのんかいな」
清八「茶は安いもんやけども、ゆっくり腰をかけて休ましてもろうたお礼として茶代を置くのやがな」

 街道沿いや峠にある茶屋は、インドのチャイ屋、チャイパサルや中東のチャイハナなどと同様に、ずっと昔から旅人の身と心を休ませてくれたことだろう。


※タイではバンコクのサヤーム・センターやメーソートのカフェに「CENCHA KYOTO」というメニューがあった。日本茶(チャー・イープン)は前から飲まれているが、おしゃれなカフェで高級なイメージで京都の煎茶が出されているのが面白い。そう言えばインドのダージリンの紅茶屋さんにも、京都のお茶のポスターが貼ってあった。

※日本におけるチャイ屋という形態は関西にしかない、というのが本当かどうかは知らない。アジア雑貨と一緒になったようなカフェは地方にも有ると思うが、大阪では山田泥庵という人が初めてインド風のチャイを商売として提供した。今では有名になってしまったカンテ・グランテや、その他諸々の初期の大阪のチャイ屋はすべてこの人に影響を受けていた。泥庵氏はいくつかのチャイ屋を経て、最終的に大正区のチャイ工房という店を開いて90年代に亡くなられた。古民家を改装したこの店が出来た頃には、まだ町屋カフェなどという奇妙な言葉もなかった。ついでながら、ただの古民家を町屋と呼んでいる店が多いのは、本当に奇妙だ。


※写真は韓国の通度寺境内にある普通の茶店です。ホームページ「アジアのお坊さん」の「韓国坊主頭紀行2…通度寺 参拝」もご覧ください!!