ベナレスはヴァラナシなのかバナーラスなのか…ベナレスの呼び方 | アジアのお坊さん 番外編

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旅とアジアと仏教の三題噺

 ある時、「地球の歩き方 インド」に、「ベナレスは英語のベナリースの日本語訛りだから、これからはヴァラナシと呼ぶことにする」と書いてあったのだが、それから何年もせずに、「でも現地ではバナーラスの方が通りが良いので、やっぱりバナーラスと呼ぶことにする」ということになって、あれれと思ったものだ。

 「南アジアを知る事典」(平凡社)の「ワーラーナシー」の項によると、もともとヴァラナシもしくはワーラーナシーと呼ばれていたこの町は、11世紀のイスラム王朝期以降にウルドゥー語訛りのバナーラスと呼ばれるようになり、その後イギリス統治時代に英語訛りのベナリースになったらしい。

 仏典にワーラーナシーと出て来るからというわけでもないのだが、私自身はヴァラナシと呼んでいるのだけれど、確かにインド人にはバナーラスと呼んでいる人の方が圧倒的に多い。

 「歩き方」には、「この町は昔、カーシーとも呼ばれていたので、君がその名を口にしたら、相手のインド人は、お、知っているな、という感じで驚くに違いない」というようなことが書いてある。確かにお愛想で驚いてくれるのかも知れないが、こんなジャータカに出てくるような言葉を口にするのは、西洋人が東京の事をお江戸と呼ぶようなもので、とても恥ずかしいことではないのかな?

※ちなみに現地でカーシーと言っても通じるし、カーシーという駅名もあります。念のため。