【プラトーン】~戦争とは 人の心をも殺してしまうことを描き切ったオリバー・ストーン監督 | 【映画とアイドル】

【映画とアイドル】

映画『007』『スター・ウォーズ』『魔法にかけられて』
アニメ『アン・シャーリー』

アイドル
STELLASTELLA・花森咲【近代麻雀水着祭2025初出演】
カラフルスクリームゆうか
KRD8・菅原未結
新章 大阪☆春夏秋冬
叶星のぞみ

🎬『プラトーン』

    PLATOON (1986)

 

 

ロシアのウクライナ侵攻が始まってからもう三年と四ヶ月以上。

この戦争が起こった時に本作のDVDを持っていることが頭をよぎりましたが、

こういうリアルな戦争映画は観るのがキツいので

ずっと観ないままでした。

 

映画館で観てからもう38年も経ちましたが、

DVDは昔から持ってても結局観ていませんでした。

 

ウクライナ侵攻後に世界は明らかにまた戦争の時代に入った感があって

遂にアメリカがイランへ初めて直接攻撃をするに至って

最悪な気分というか、恐ろしくなって

映画館で観て以来、この作品と向き合ってみようと思いました。

 

 

 

本作はアカデミー賞作品賞・監督賞・編集賞・録音賞を受賞するなど高く評価されましたが、ボクは当時はそれほど本作を評価しなかったというか、好きになれる作品ではありませんでした。

 

でも今観たら、これはそもそも好きになれるような作品じゃないのは当たり前で、

なんなら観て 気分が悪くなって当たり前の作品であることが分かりました。

それこそが自身もベトナム戦争を経験したオリバー・ストーン監督の狙いだからです。

 

 

 

 

本作を好きにはなれなかった理由は、いくらリアリティーにこだわった作品とはいっても、あまりにも映画的カタルシスがないからでしたが、今回久しぶりに観てそれも納得できました。

 

エリアス軍曹が死ぬシーンは映画史に残る映像的なカタルシス(この表現が相応しいか分からないけど)があると言えます。

 

 

 

 

本作の肝が、戦争が大量に人を殺してしまう行為にとどまらず

人間性をも殺すものであることを描いてる点にあることは間違いないですが、

同じアメリカ兵同士が善と悪の立場に分かれるのは一見ドラマチックになりそうですが、

本作にはそういう感じもないところが逆に素晴らしいことに気づきました。

 

 

 

公開当時は絶対悪にしか見えなかったバーンズ軍曹の言動も、

当時よりは‘理解’とまでは言わないものの、‘有り得るよな’とは思ったからです。

むしろ非情な人間だったからこそ自身が所属する部隊の兵士たちの命を救えたという側面もあったんだろうと今回は思いました。

 

 

しかし、ベトナムの農村で女性を殺したことはやはりどう考えても肯定できない犯罪だと思ったので、

それに怒りをあらわにしたエリアスに完全に感情移入しました。

エリアスの考えに同調する主人公の新兵テイラーにもです。

 

 

エリートでも 現場では頼りない上官もリアリティある。

 

 

 

現代の戦争においても民間人の犠牲が出ることに変わりはないのがやるせない。

 

 

 

 

テイラーがわざわざ志願してベトナムに来たところもミソで、

家庭環境に恵まれず仕方なく軍隊に入ってベトナムに来てる人間が多いからこそ、

テイラーみたいな人間から見た戦争の姿がよりリアルに感じられます。

仕方なく兵士になってる人間よりも、

自らの意思で地獄のような戦場に来てしまったぶん、

より戦争の恐ろしさとベトナムに来てしまった後悔が強く感じられるからです。

 

 

 

今回観て印象的だったのは、

主人公が死体袋を見るシーンから始まって

死体を捨てるシーンを見るところで終わることでした。

つまり、戦争=人の死でしかないということです。

 

本作が秀逸なのはその上に

戦争がもたらす人間性の死をも描いているからです。

 

 

テイラーがだんだん戦争というものに染まっていく様が恐ろしくもありますが、

バーンズが悪として、エリアスが善としてハッキリ描かれていることで

実はなかなか映画的な分かりやすいドラマになっていることが分かります。

今観返すと、テイラーがエリアスとバーンズという異なる思考を持つ先輩兵士の狭間で迷うところがあってもよかったかもしれません(ラストのテイラーの言葉ではそれを感じます)。

もちろん、完全にエリアス側の考えに立ってブレないテイラーも魅力的なんですが。

 

 

エリアスを演じるウィレム・デフォーも

バーンズを演じるトム・ベレンジャーも素晴らしいですが、

特にデフォーは、ボクはずっとアカデミー賞を本作で受賞していたと思い込んでたほど素晴らしいです。

 

本作で特に印象的なシーンはふたつあったんですが、

先にあげたエリアスが死ぬシーンと

テイラーと星空を見上げて会話するシーンでした。

「きれいな空だ」

 

「ああ 空だけはな」

 

「良いも悪いもなく光ってるんだ」

 

「俺たちの国は横暴すぎたよ。

 罰が当たるころだ」

 

 

 

 

 

 

全編を通してベトナムの気候の過酷さを描いていながら

唯一自然の美しさを感じるシーンでした。

地獄のような戦場でも空の美しさは変わらない、と。

 

 

ボクはエリアスが死ぬところがクライマックスと記憶していましたが、

実はそこからが意外に長い。

 

 

エリアスとバーンズの対立が片方の死で終わっても

戦争はそのまま続くわけです。

しかももっと地獄の様相を呈していく。

 

 

 

テイラーが全く躊躇せずバーンズを射殺するところがなかなか衝撃的で、

テイラーも人間性が破壊されてしまったことが分かります。

ここのストーン監督の演出も見事です。

普通ならいくら悪者相手でも、抵抗できない人間を殺すことに対してほんの少しでも

葛藤する描写を入れそうなものですが見事なまでにそれがないことで

戦争というものが人間を変えてしまう恐ろしさが鋭く描かれていると思いました。

 

 

“エリアスとバーンズの反目”とはまさに今の世界とも言えるし、

その間にいる国や人間がいるのも今の世界と言えると思います。

 

 

ボクはトランプ大統領が大嫌いですが、戦争をやらないところは良いところだと思っていました。

でも、まるで騙まし討ちみたいなやり方でイランを攻撃して

まるで脅しのような発言もしています。

戦争に対する考え方はブッシュ(息子の方)よりマシだと思っていましたが

もはやそれもなくなった。

 

 

今回ブログを書くにあたって あらためてストーン監督のことをウィキペディアとかで調べたら、

ストーンは親プーチン、親ロシアの立場を過去に表明していたそうで少なからずショックを受けたんですが、

ストーン監督は、自分の戦争の実体験をもとに

とにかく戦争の真の姿をボクたちに見せることで

戦争は是か非か?

本作を観た人間の判断に委ねようとしているように感じました。

それをラストにテイラーに代弁させています。

 

 

映画という たくさんの人が目にするメディアで戦争の真の姿に迫り

観た人間に戦争について考えさることで

ストーン監督がこの作品を作った意義はあったと言えるでしょう。

 

映画館で観た十代の時には今ひとつ心に入ってこなかったこのラストの言葉が

戦争がいつまでたってもなくならない今観たら心に入ってきました。

 

 

 

 

このブログはたまたま‘沖縄慰霊の日’に書いていて

TVでもその特集を見ましたが、

戦争の体験を語り継いでいくことの大切さを思い知らされました。

戦争を兵士として経験した方の言葉が重いです。

兵士に限らず、戦争を体験した人すべてが実感したことなんじゃないかと思います。

 

 

「人間が人間でなくなることが戦争なんだ」