JOHN RAMBO (2007)
映画秘宝@eigahiho
シルヴェスター・スタローン主演『ランボー5』=『Rambo V:Last Blood』の初画像が公開!誘拐された友人の娘を救い出すために、ジョン・ランボーがメキシコ麻薬カルテルとの戦いに挑む。『キック・オーバー』エイドリアン・グラ… https://t.co/n1uopJJG5y
2018年11月02日 11:33
ついに5作目の撮影がスタートした『ランボー』シリーズ。
シルベスター・スタローン自身が唯一監督した4作目『最後の戦場』は
まさに スタローン自身の熱い思いがスクリーンに叩きつけられた傑作!!
個人的には シリーズで一番好きな作品です。
お馴染みのスコアで静かに始まる本作。
弓矢で魚を捕るシーンに象徴されているように、
戦場から完全に離れたランボーの姿に納得。
前三作までの熾烈な戦いを思い出すと、もう 兵士であることを辞めたくなった気持ちもよく分かる。
しかし、弾圧されているミャンマーの人たちに医療品を届けに行きたいと言うNGOの一団に
現地への案内を依頼される。
いわゆる ボランティアみたいなものやと思うんですが、
戦場の現実を身を持って知っているランボーは受けようとはしない。
戦場に民間人が安易に足を踏み入れるのは危険でしかないことが分かっているから。
この一員のサラを演じるジュリー・ベンツという女優さんがなかなかキレイでいいんですが、
感じのいい美人に熱心に頼まれると、兵士として以前に、
ランボーが男として断れなかったのはよく分かります。
サラが言ってることが‘綺麗事’と分かってはいても―。
決して軟派じゃない。 ランボーは、その優しさも正に本物の男なんです。
脚本も書いたスタローンは、『ロッキー』の脚本でアメリカンドリームを掴んだ人だけに
ストーリーの作り方も手慣れたもの。 コンパクトな上映時間でそつなく伏線も張ってるのは流石です。
戦場は“殺るか殺られるか”の二者択一。
しかし、ボランティアのリーダーにはそれが実感としてはない。
サラに好意を抱きながらも、とりあえずは見送るしかないランボー。
ずっと孤独に生きてきた男の哀愁も感じます。
ボクが本作がシリーズで一番好きなのは、
アクションヒーローになったランボーが原点に立ち返り、
戦争の悲惨さを体現する男に戻っていたからです。
しかも、片田舎で話が展開する一作目と違って、
まさに戦場の真っ只中で戦争の凄惨な現実を見せつけるスタローンの演出には執念すら感じます。
せっかく‘大金を稼げるヒーロー’になったランボーを現実の兵士に戻したスタローン。
現実に虐殺が起こっているミャンマーを舞台にしたのもスタローン自身の意向。
世界的なアクションスターでありながら、ここまで自分の思想をスクリーンに刻み込める俳優は
スタローンくらいしかいないと思う。あとはイーストウッドくらいか。
本作は世界各国でR指定を受けた映像のせいか
大手が製作したり配給したフシがない。これは大ヒットシリーズとしては異例なことやと思う。
つまりスタローンは、金儲けより 自分の意志を観客に提示することを選んだんやと思う。
独裁者が率いるミャンマー軍が 少数民族のカレン族を襲撃するシーンでは
当たり前のように脚が吹き飛び、罪のない人たちの血が多く流れる。
この凄惨なシーンを見せつけられて、これは今までのランボーとは全く違うことに気づかされます。
(スタローンは本物の戦場に観客を叩き込もうとしている!)と。
一作目を見た時はまだ中学生やったせいか、ラストに感動しつつも
アクション映画としては物足りなさも感じた記憶がある。
しかし、大人になって 世界の至るところで不条理な戦争が起きている現実を知ってしまってからは
一作目のテーマ性も今の方がよく理解できます。
結局 国や大儀を背負っても仕方がない。
ランボーが自分自身の思いで戦場にまた足を踏み入れる決心をするのは説得力があります。
まずは政府に雇われた傭兵部隊がボランティア団体の救出に向かうというプロットもリアルでいい。
今回のランボーはアクションヒーローじゃないから 一人で救出するわけじゃない。
ミャンマー軍の傍若無人ぶりをただ見ているだけやった部隊を尻目に
ランボーが酷い兵士たちを次々と倒すシーンは一気に燃える!!!
弓矢をふたたび武器として持ったランボーには確固たる意志が見える。
‘戦士’に戻ったランボーには、映画というエンターテイメントとしてのカタルシスもきっちりあるのが
さすが何十年もトップスターであり続けるスタローンの魅せる力!!
敵を倒す描写も、二・三作目とは明らかに一線を画する凄惨なもの。
映画的なカタルシスを味合わせながらも、同時に戦場の悲惨さも見せつけるスタローンの演出に
強烈に引き込まれます!
戦場に戻ると決意したからには、確固たる意志で戦いに身を投じるランボーにシビれる!!
傭兵部隊の俳優たちは知らない面々ばかりでしたが、
それぞれに個性があって、いいメンツが揃っているのがいい!
特に スナイパーのニイちゃんがイイ感じで、前作までにはない面白さが加わってます。
自然を活かしたロケ映像もいいです。
ミャンマーに近いタイ北部でロケしたそうで、
政府の脅しに屈することなく出演したミャンマー人もいたそうです。
スタローンだけでなく、実際のミャンマー人たちの本気も窺えます。
本作がひとつの大きな発信になったのは間違いないと思います。
臨場感のある撮影も迫力あります!
ここからのクライマックスは今までにボクが見た戦争映画の中でも最も凄惨なシーンの連続。
人体破壊は当たり前。
しかし、これは スプラッター的‘見せ場’ではなく、あくまでも 戦場の‘真実’。
戦場では 綺麗事は通用しない。
人殺しなど絶対できないと思っていた NGOのリーダーでさえ狂気の形相になる。
CGによる人体破壊シーンは今見てもリアルで恐ろしい。
本作の後で製作されたスタローンの『エクスペンダブルズ』のCGより余程よくできています。
きちんと表現されていたら、CGでも生々しさは伝わってきます。
悪玉へのオトシマエの付け方も文句なし。
しかし、これで 戦争が終わるわけじゃない。
サラはランボーに会った時、彼の中にあった人としての優しさに気づいていたはず。
しかし、戦士としてのランボーの姿を目の当たりにした時、
自分とは住む世界が違う人間と悟ったと思う。
サラに好意を抱いていたであろうランボーも、彼女を命懸けで助けても 掛ける言葉も無い。
またも戦場で戦ったランボーが静かな生活に戻れるのか?
本作がどう帰結するのか、不安な思いでエンディングを待ちましたが、
思わぬラストシーンに、ボクはこのシリーズで初めて涙しました。
一作目の冒頭、友のもとを訪れようとした時を彷彿とさせるランボーの姿―。
彼が最後に帰った場所は 家族のもとやったんです。
もう、このシーンを見て 涙を止めることはできませんでした。
帰る場所をやっと見つけたランボーの背中を見て、
本シリーズが真の意味で完結したことに感動しました。
でも、さらに世界が混沌としている今、ランボーの帰還は必然と言えるでしょう。
ジョン・ランボーのような男が 現代にこそ必要なんです。