SWORDFISH (2001)
いきなり映画のうんちくを垂れるジョン・トラボルタ(ガブリエル)が印象的なオープニングから
本作に張り巡らされた罠に、主人公のスタンリーと一緒に観客も騙されていきますが、
ガブリエルの正体が終盤に分かった時に驚き、ラストのオチでは鳥肌が立った記憶があります。
本作が日本公開されたのは 2011年11月3日。
あの 同時多発テロから二ヶ月足らずのタイミングでした。
本国アメリカで公開されたのは、同時多発テロの約三ヶ月前。
劇場で観た後、(同時多発テロの後やったら、こんな作品は作れなかったに違いない)、
そう思ったことを鮮明に覚えています。
ガブリエルの正体が極めて危険なテロリストだったからです。
映画館で観たのが同時多発テロのすぐ後やったから、それとリンクして記憶に残っている作品なんですが、プロデューサーは『マトリックス』を大成功させた直後で絶好調やったジョエル・シルバーですから
基本的には シルバーお得意のアクション娯楽大作です。
アカデミー賞を受賞する直前のハル・ベリーのセクシーな演技も見ものです。
トラボルタはとんでもない悪役をやっても 愛嬌のある感じが本当に面白い。
『X-MEN』でブレイクした直後のヒュー・ジャックマンもノリにのってて、
主演三人がここまで最高な顔ぶれの映画ってのもそうないと思います。
スタンリーが娘を取り戻したいがために、ガブリエルの策略にハマっていく展開も上手いです。
悪党に手を貸しているとはいっても、父と娘の絆を見たら、ガブリエルに感情移入できるんです。
前作『60セカンズ』でもなかなかセンスのいいアクションを見せたドミニク・セナ監督の演出は本作ではさらに冴えて、独特の映像美も見ものです。
本作以降目立った活躍がないのが本当に惜しい。
狙ってる金額がハンパじゃなく、しかもそれで私腹を肥やそうというワケではなくて、
‘アメリカを守るための戦争資金’、すなわち テロのための資金というのが恐ろしい。
ジョエル・シルバーだけに、ド派手なアクションもきっちり見せてくれます。
この ‘やられたらやり返す’という考えが正に‘暴力の連鎖’を生み、いつの世もテロが無くなるどころか 年々テロの被害が拡大してしまっているのが現実。その事実を踏まえて今観るとなおさら怖い。
しかし、テロをやる側は狂信的というか、自分なりの善悪の基準だけで、他人を犠牲にするのもいとわないところが本当に恐ろしい。
アメリカを脅かすテロリストを撲滅しようとする行為も紛れもなく‘テロ’であることに気づかない怖さ。
このクライマックスもアッと驚く展開とビジュアルで、今観てもその斬新な見せ方に引き込まれます!
スタンリーが娘を取り戻すハッピーエンドと同時に展開するもうひとつのエンディング。
‘テロをテロで封じ込める’ことの恐ろしさと愚かさを描いた本作は、今なお強烈なメッセージを放っていると思いました。
先にも書いたように、基本娯楽作ですが、ミスディレクションの手法を使いながらも実は真正面からテロというものの恐ろしさを描いた本作は、もっと評価されてもいい とあらためて思いました。