BUFFALO'66 (1998)
このDVDのケースからして時代を偲ばせる感じですが、
映画館で観てから もう 17年。 DVDで観たのもかなり久しぶり。
そんな 長いこと観てなかった映画、しかも 静かで一風変わった作品を何故急に観たくなったのか?
最近になって初めて観た『ウェルカム・バクスター』でクリスティーナ・リッチを見たから彼女の作品を見たかったっていうのも勿論あったけど、
ちょっとどころかなかり辛いことがあったから、映画で癒されたかったんやと思う。
パッと見いかにもミニシアター系の芸術的作品みたいで、実際にそういう要素も多分にあるけど、
だからといって映画マニアにしか楽しめないような作品じゃない。
寒々とした刑務所のシーンから始まる物語は、主人公のビリー(ヴィンセント・ギャロ)がトイレを我慢するというシチュエーションから始まる。
こんなシーンから始まる映画なんて他にはないと思いますが、この 一見バカらしいシチュエーションで
すでに主人公の性格がなんとなく伝わってきます。
刑務所から出てきたばかりで行きずりの女レイラ(クリスティーナ・リッチ)を
自分の都合のためにさらうなんて、酷い男のハズなのに、どうもそうは見えない。
その観客の視点とレイラの視点はおそらく一緒であり、なんとも冴えないビリーをほっとけなくなってくる。
つまり、この男がどうなっていくのか見届けずにはいられなくなってくる。
それは、完全に映画の中の物語に入り込んでしまうということです。
ビリーが帰る実家の両親がなかなか個性的ですが、ギャロが自分の両親との体験をベースに脚本を書いているので、普通なら‘作られた’キャラクターに見えるような両親もけっこうリアルな肌触りがある。
自分も親になってからは初めて観た気がしますが、
嫁さんと子供の不毛な?wやりとりに頭を抱える父親の気持ち、よく分かります(^^ゞ
辛さの理由コレやし(苦笑)
嫌いな両親に対して体裁を取り繕うとするビリーの気持ちも妙に分かるから見ていて面白い。
ビリーはちょくちょく間抜けなとこを見せるから、さらわれた立場のレイラが早い段階で警戒心を解くのも自然な流れに見える。
そもそもレイラには逃げるチャンスがあったし、そういうチャンスを何回も与えてしまっているビリーは
とてもじゃないけど誘拐犯って感じじゃない。
時に大胆な手法を見せるヴィンセント・ギャロの演出が素晴らしい!!
ギャロはミュージシャン・画家・写真家・モデルの顔も持つ正にマルチな人。
本作では原案・脚本に音楽まで手掛けて、彼の非凡な才能を感じられる傑作になっています。
今ごろになって初めて(^^ゞ 映像特典の ギャロの 日本人に向けたインタビューを見ましたが、
意外によく喋る人なんですね^^ 自身の過去の体験を凄く克明に語っていましたが、
その時の気持ちを投影させているから、本作には彼のリアルな息づかいを感じるんやと思います。
どう見ても世間一般的にはロクデナシな男のビリーのために行動をともにする
レイラを演じるクリスティーナ・リッチは この時が一番ぽっちゃりしてたんじゃないかと思うほどふくよか。
トップクラスの女優としてはありえない体型ですが、実はそれがすごくいい!!
そのリッチの風貌がなんとも母性的で、本物の母親からはまともな愛情を受けてないビリーにとって、
子供時代からの心の穴をも埋める存在にレイラがなっていくことに説得力があります。
これはフツーにキレイなだけの女優では絶対に出せない味!
当時はまだ18歳くらいだったというのが、今さらながら驚きです。
ビリーは変わった両親のために不遇な子供時代を過ごしたのに、
もの心ついてからずっと憧れていた女性にまで心情を裏切られるシーンは本当に痛い…。
レイラはビリーの繊細さにすぐ気づいたから、彼と行動をともにしたんやと思う。
それに ビリーはハンサムやからね^^ ココ重要ですw
大好きな作品でありながら長いこと観てなかったのは、
この作品の魅力を文章で表現できる自信がなかったということもあります。
この頃は、DVDで観る=ブログ書くって感じですから(^^ゞ
モーテルのベッドで二人が寄り添うシーンは一生忘れられないですね。
リッチが本物の女神に見えた瞬間でもあります。
‘一生付き合いたい’って思える映画って数えるほどしかないけど、
この『バッファロー ’66』はそんな一本やと思います。
だからこそホンマに辛い時に観たくなって、思った以上にというか、完全に映画の中に入り込んでた。
そして、希望が見えなくなっていたボクに、また 希望の可能性を教えてくれたこの映画は、
17年前よりずっと、ボクにとって大切で必要でもある映画になったと思います。