【朗読作品】パー線・2 | pionpionのノンジャンル気まぐれ日記

【朗読作品】パー線・2

以前の作品「パー線 」を、実態に合わせて改作したものです。


初回発表:2015/9/6 OPEN MIKE Sherpa番外編@渋谷・喫茶SMILE


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パー線・2


木更津という街に来てみた
駅前にどーんとそびえるビルは人影も少なく
ビルの外にダダ漏れしているFM放送の音が
淀んだ空気を切り裂く


古ぼけたアーケードも今は昔
シャッターの目立つ通りに
増えるのはコインパーキングばかり


人々はみんな丘の上へ行ってしまったから
この街は素通りするだけ
店も何もかも、人々を追いかけて、丘の上へ


人々はみんな海のそばへ行ってしまったから
この街は見向きもされず
店も何もかも、人々を追いかけて、海のそばへ…


「久留里線に乗ると、この街が都会に見えるよ」
そんな魔法があるものか、などと思いながら
乗り込んだディーゼルカーの中はすでに都会


駅を出て道路の下をくぐると、もう一面の田んぼ
家、田んぼ、丘、を繰り返しながら
いつの間にか農村地帯へ


昔からの街並みに着いた
そこには「まくた」と書いてあった
ここからは「東京行き」のバスが来る
だからといって、ここが都会という雰囲気は、ない
あの頃の自分を想い出す


元来た道を戻る
ひたすらに農村地帯を走っていく
どこまでもどこまでも続く田園地帯
しかし、乗っている列車の中だけはすでに都会へ


「間もなく、終点、木更津です。…」
道路の下をくぐると、林立するビルの数々


「久留里線に乗ると、この街が都会に見えるよ」
本当にここは都会だ
「東京行き」の列車がやって来る
本当にここは都会だ


「おめえさん、今日は何時でけーる?」

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