私は2007年11月、福島第2原子力発電所を見学した。原発は、日本の発展を支えてきた重要施設であり、一度は自分の目で確かめてみたかったからである。当時の所長は石崎芳行氏。現在、東京電力福島復興本社の代表を務めている。
石崎氏は、原子力発電の仕組みから、原発立地自治体との関わり、地元住民との信頼関係をいかに大切にしているかなどを細かく説明してくれた。施設の入出時に必ず行う放射線量測定や、施設内で働く地元住民の方々に触れるたび、私が東京で何不自由なく、際限なく電気が使えるのも、ここにいる人々のおかげなのだと身に染みた。
原発事故による強制避難などで不本意に失われた命もある。今までの生活が続けられなくなった人々たちも多い。一方で、原発から遠い場所に住む人々は、節電意識は定着してきたとはいえ、事故前と何か大きく生活が変わっただろうか。
10年の日本の電力構成は、原子力が28・6%、石炭・LNG・石油などを原料とする火力が61・8%、水力が8・5%、地熱および新エネルギーは1・1%だった。震災後の12年には、原子力は1・7%になり、火力が88・3%まで上昇した。
現在、国内54基の原発は1基も稼働しておらず、火力の発電量は増えている。この結果、追加の燃料費は3・6兆円も増加し、それに伴う電気代も上昇し、二酸化炭素排出量も増えている。
もちろん、「経済・環境面を優先し、安全を軽視していい」というわけではない。だが、日本人が極めて迷惑と考えている中国発の有害な微小粒子状物質「PM2・5」は、石炭による火力発電で発生する。火力発電の依存度は、中国と今の日本は同じぐらいである。
日中の火力発電所の性能は大いに違うだろうが、全発電量における再生可能エネルギーの割合が1%程度という状況で、「原発ゼロ」を決めれば、それは大きな健康問題につながりかねない。
エネルギー政策は、国の経済だけでなく、医療や社会福祉、教育など国民生活のすべてを支える。何より、安定した供給が重要であり、資源のない日本はそのために原子力政策を進めてきた。火力発電が9割近くを占め、原油の中東依存が8割を超えるなか、中東情勢が緊迫化すれば、日本経済や国民生活は大打撃を受ける。
こうしたことを考えると、来月にも閣議決定される「エネルギー基本計画」で、原発を重要な基幹電源と位置付けたことは「妥当な判断」だと私は思う。東日本大震災の教訓を生かし、何重にも安全対策を取ったうえで、現実的なエネルギー政策を進めてほしい。