テレビの仕事っちゅうのは大体3人でロケに出ることが多い。
カメラマン、音声VE、カメラアシスタント。
ほとんど一緒に行動するから常にお互いの仕事を見てる感じだ。
現場はタイトなスケジュールの中、撮り逃しは絶対許されないような緊張感のあるピリピリしたものが多い。
だから立場上一番下のカメラアシスタントはへまをすると怒られる。
まぁ失敗してるんだから怒られるのは仕方ないんだけど、ずっと一緒だからいつ怒られるかとビクビクしっぱなしだ。
常に先輩に気を使い続けるわけだ。
先輩といい人間関係を築ければ、そこまで精神すりへらす事もないんだろうけど、人それぞれ、相性ってもんがある。
そういったものを我慢して、努力して、何年も経験を積んで仕事を覚えるとカメラマンか音声VEになれるんだけど、実際なったらなったで今度はディレクターに気を使わなければならない。
ディレクターは企画を持ってくる人で、現場ではディレクターの指示の下、撮影が行われる。
ディレクターの期待するカメラワークが出来なければ、カメラマンは次から呼んでもらえないかもしれないし、もちろん人間関係も大事だから、例え気に食わない人とでも親しくしないといけない。
カメラマンはそういったプレッシャーの中で仕事をしている。
くそ重いカメラを一日中担いで、腰を痛めながらもカメラを振り続ける。
休みも不定期だし、給料もそんなに高くない。
それでもこの仕事を続ける人は本当に好きなんだと思う。
おれはこの仕事をそんなに好きにはなれない。
だから今日社長に辞めるって伝えた。
こっぴどく怒られるかと思ってたけど、意に反して随分とやさしかった。
お前の人生やから好きなように生きたらええやってさ。
ずっと辞めたい辞めたいって思ってきたけど、実際それを伝えるとひどい罪悪感を覚えた。
この会社は嫌いやったけど、怒られながらも今まで教えてもらったこともあるし、厳しくしてたのも敢えて仕事を覚えさせるためにやってたんかもしれんし。
そういったものを全部無駄にしてしまうのも正直気がひける。
また、おれが辞める事によって他の人間の仕事も増えるやろうし。
期待されてたのかされてなかったのかわからないけど、少なからず先輩の好きな仕事をこんな形で否定してしまった訳で。
そんな訳のわからないもやもや感で胸がいっぱいだったので、たまらなくなり最近控えていたタバコを吸った。
ひどい味だった。
こんなにまずいタバコを吸ったのは初めてだ。