久しぶりにブログを更新します。

 毎日更新する人からすると怠惰かもしれませんが、徒然日記と銘打ってもいますのでそれもありかなと思っています。

 

 さて、個人が法人に土地、建物等を寄付した場合には、時価で譲渡したものとみなして所得税の課税対象になります(所得税法59条)。

 

 ただし、国、地方公共団体に対する寄付や公益法人等に対する寄付で一定の要件を満たすものは非課税となっています(租税特別措置法40条1項)。

 

 地方自治法の改正によって、自治会などの地縁による団体は市町村長の認可で法人格を得て不動産の登記ができるようになりました。さらに、平成20年12月に通達が改正され、地縁認可団体も公益法人等とみなされることとなりました。つまり地縁認可団体への財産の寄付も所得税法上非課税となる余地ができたわけです。

 

 しかしその場合、①寄付が教育または科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他の公益の増進に著しく寄与すること、②寄付財産が株式等に該当いないこと、など国税庁長官の承認を受けたものに限られます。

 

 要件がかなり厳しく、加えて申請手続き等も煩雑です。所有する不動産などを地域に役立ててもらいたいと、寄付を考える方もおられるでしょうが、個人が地縁認可団体に寄付する場合通常は時価による譲渡があったものとして譲渡所得の課税が生じると割り切った方がベターかもしれません。

 

              

 

 

 

 

 最近、北陸税理士会の機関誌「北陸税理士界」の原稿依頼を受け、先日の9月号に掲載されました。内容は、8月の全国統一研修会に参加しての研修内容と感想です。なぜ自分に話が来たのか若干不思議に思いつつも期限間近に急いで書きました。

 

 それはさておき、その研修でのテーマの一つに、保険に関する税務判決で大きな反響を呼んだ通称「長崎年金事件」がありました。

 

 

  最高裁平成22年7月6日第三小法廷判決は、夫が死亡して妻が受け取った生命保険金をめぐり、10年間分割して受け取る年金部分に相続税だけではなく所得税も課税される実務について、所得税を課すことは許されないとして納税者勝訴の判定をしました。

 

 この事案の争点は、①生命保険契約等に基づく保険金は相続財産とみなしているが、年金の分割された保険金がこれに該当するか、②年金が所得税法の非課税規定による「相続、遺贈又は個人からの贈与により取得するもの」に該当するか、③仮に非課税だとすると生命保険会社が行っている源泉徴収も違法になるのか、などです。 

 

 最高裁は、「年金の方法により支払いを受ける保険金のうち相続税の課税対象となる価額は、当該保険金の取得の時における時価、すなわち、将来にわたって受け取るべき年金の金額を被相続人死亡時の現在価値に引き直した金額の合計額に相当し、その価額と残存期間に受けるべき年金との総額との差額は、各年に受け取る年金の現在価値をそれぞれ元本とした場合の運用益の合計額に相当する」としています。

 

 多分にわかりにくいのですが、結局1年目の年金は夫の死亡日を支給日としているので、支給額と夫の死亡時の現在価値が一致しており運用益はなく、所得税は非課税となるということです。さらに、2年目以降10年目の年金は夫の死亡時における現在価値相当分、すなわち元本部分はすでに相続税の課税対象となっており所得税は非課税となるが、運用益に該当する部分は所得税が課税されるということになりました。

 

 因みに、源泉徴収については、所得税法上は非課税であっても源泉徴収自体は違法ではないと判示しています。

 

 元本と運用益というならば、どれだけが元本でどれだけの期間運用するのか、また、運用益は元本に対してどれだけの利率かといったことが本来明確でなければなりません。そのような疑問はあるにしろ、税理士としてはまず現役世代の死亡に伴う遺族に対する課税の是非を検討すべきと考えます。そして、この判決で勝訴した妻に実際に帰ってくるのは25,600円に過ぎなかったのですが、その影響は小さくありませんでした。
 

一人の主婦が抱いた率直な思いが国の法律を変えてしまったという点でも、まさに画期的な判決であったと思います。
 

 過去に相談を受けた事例で、「山奥に自治体に寄付しようとしても拒否された3人の共有名義の土地がある。身内がその1人で固定資産税を払い続けており、できれば処分したいがどうすればよいのか」というものがありました。

 そこで、可能か否かにかかわらず、考え得る処分の方策とそれぞれの課税関係等を提示しました。以下その内の2点です。

 

 1. 他の共有者への贈与

    3人の共有名義であれば、いずれかの1人に持分を贈与します。

 

 2. 共有持分の放棄

    持分の放棄とは、共有者の1人が自己の持分を放棄することです。共有の土地の持分 

   を放棄すると、放棄された持分は他の共有者の持分に帰属し、各共有持分の割合に

   従って持分が帰属することになります(民法255条)。

 

 1と2の違いは、贈与が契約であるのに対して、持分放棄は放棄する人の意思表示によって効果が生じる点です(単独行為)。

 

 しかし、共有持分放棄を宣言しただけでは登記上の所有権は残ったままで、固定資産税の連帯納付義務からは逃れられません。一部の例外を除いて、固定資産税はその年の1月1日現在、固定資産課税台帳に登録されている固定資産の所有者に対して課税されるからです(地方税法343条1項、2項)。

 

 従って、贈与も持分放棄も他の共有者と共同で登記をする必要があります。持分を放棄して、他の共有者が、固定資産税が増額するため登記を拒否した場合、登記引取請求訴訟を起こし勝訴すれば共有持分を放棄した人が単独で登記することができるようですが、現実的ではありません。

 

 課税関係についてですが、共有者が自分の持分を他の共有者に贈与した場合、持分を受けた人(受贈者)に土地の通常の価額、すなわち不特定多数の者との自由な取引において成立する客観的な交換価値で贈与税が課税されます。

 

 持分放棄の場合も、他の共有者の帰属する持分の割合に応じて贈与税の課税対象になります。

 

 因みに、贈与税には連帯納付義務があり、通常は財産をもらった者(受贈者)が税を負担しますが、財産を贈与した者(贈与者)も連帯して納付する責任が法律上あります。

 

 相続が発生してから、相続人全員が相続放棄をするなどの方法はありますが、贈与税と登録免許税を負担することで、話し合いにより贈与か持分放棄により解決できれば、これがより手間の少ない方策と思われます。

 

 全国的に空き家問題がクローズアップされていますが、不要な不動産対策が身近な問題である人も多いことでしょう。今後状況が良くなるとは見通しにくく、改めて厄介な問題だと考えさせられました。