関東在住のころ、関西出張の帰りに新幹線が東京駅に近づくと、ビルとビルの間からライトアップされた東京タワーが見える瞬間があり、その赤と白が「優雅で美しい」と感じていました。

 でも、実は東京タワーは「赤と白」ではないことを最近知りました。

 正確には「オレンジと白」で、赤っぽい部分は、「黄赤(インターナショナルオレンジ)」と呼ばれる色なのだそうです。東京タワーを運営する日本電波塔株式会社が実施した「東京タワーに関する認識調査」によると、約8割の人が東京タワーを「赤」または「朱」と答えたそうで、私も朱色だと思っていました。

 この黄赤と白が交互に帯状に塗装される配色を「昼間障害標識」といい、航空法と航空法施行規則に定められていて、飛行機から認識しやすい色として採用されているそうです。

 

 しかし、そんなことではなくて、私は東京タワーのこの色の配色に既視感があありました。

 「なんだろう?どこかで見たこの感じ・・・。」そしてそれは、このピンバッジを見た時に思い出したのです。

 

【みなと区民まつり2023年有章院霊廟二天門】

東京タワーを背にしたプリンスホテル正面の二天門がデザインされています。

 

 『有章院霊廟二天門』

 戦前、現在の東京プリンスホテル敷地には六代将軍家宣の文昭院霊廟と並んで、七代将軍家継の有章院霊廟がありました。1717年(享保二年)霊廟は八代将軍吉宗が建立し、その惣門が二天門です。1945年(昭和二十年)日光に劣らぬと伝わる霊廟でしたが、東京大空襲で焼失しました。焼け残った二天門は銅板葺、切妻造りの八脚門で、左右に仏法保護の役目を持つ広目天、多聞天が祀られています。同年に焼失した文昭院霊廟の門に持国天、増長天が置かれ、合わせて四天王として祀られていました。

 

 「みなと区民まつり」は、毎年10月に芝公園一帯を会場に開催され、記念バッジを製作は、1982年(昭和57年)の第1回からになります。当初は、みなと区民まつりのロゴ(公募)がバッジのモチーフとなっていましたが、2002年から建物シリーズとなり、東京タワーが一番最初のモチーフとなっています。

 

 

 そこで、このみなと区民まつり2023年有章院霊廟二天門ピンバッジのモデルになった現地へ行ってみました。

 二天門に東京タワーです。

 

 で、私の記憶の底にあったのがこれ、

 大阪の『四天王寺さんの中門と五重塔』です。

 朱塗りの柱と白壁が印象的な四天王寺さん。

 

 写真は白壁と朱塗りの柱に囲まれた「四天王寺」ですが、1934(昭和9)年の「室戸台風」で倒壊し、1940(昭和15)年に再建するも、1945(昭和20)年の「大阪大空襲」で伽藍のほとんどを焼失しました。昭和30年代に再建が進められ、現在の「五重塔」は1959(昭和34)年に再建されました。

 

 少し調べたところ、東京タワーの設計者は、内藤多仲さんです。内藤さんは、パリのエッフェル塔を参考にしながらも、日本独自の美意識や技術を取り入れて、東京タワーをデザインしたと資料にありました。「日本独自の美意識や技術」!

 

 名古屋テレビ塔や大阪通天閣(二代目)の構造設計を一手に引き受けた建築家・内藤多仲さん。「日本の耐震建築の父」「塔博士」の異名を取り、日本人初の構造デザイナーと呼ばれています。

 耐震構造は平面と断面の全体をのみこまれてから方針を決められることが多く、施工が始まると現場をしばしば訪れたそうです。大阪の二代目通天閣の着工が1955年、東京タワーの着工が1957年からです。きっと内藤さん、通天閣の施工中に現場の大阪の天王寺に何度か訪れていることでしょう。

 すぐ近では、東京帝大の後輩である藤島亥治郎さんが手掛ける四天王寺の再建が、東京タワーと同じ1957年から始まることになっており、こんなシーンが私の脳内に映画の一場面のように広がりました。

 

 場所は、天王寺の裏通りの居酒屋、二代目通天閣の現地視察に来た内藤多仲さんと四天王寺の再建を準備している藤島亥治郎さん。

 「どう、四天王寺の再建準備進んでる?」

 「いやぁ先輩、通天閣、すすんでますねぇ。」

 「今度さ、東京で、でかいテレビ塔立てるんだけど、

  四天王寺と同じ時期なんだ。」

 「四天王寺は、どんな感じなの?」

 「こんなイメージなんですけど、どうですかねぇ。」

 「いいねぇ、白壁と朱塗りの柱、

  塔は、パリのエッフェル塔を参考にするけど・・・。」

 「日本独自の美意識や技術を取り入れようと

  考えてるので、とても参考になるよ。」

 

 なんて感じで、最終段階でのタワーのペイントカラーに何らかの影響を与えたなら・・・?

 あらためて、みなと区民まつり2023年有章院霊廟二天門のピンバッジと四天王寺さんの中門と五重塔、想像するととても楽しいですねぇ。

 

出典、参考文献・HP

東京とりっぷ HP

公益財団法人 港区スポーツふれあい文化健康財団

みなと区民まつり実行委員会事務局 HP

人間力・仕事力を高めるWEB chichi 2022年11月10日

東京タワーはかくて完成した──建築家・内藤多仲の生き方

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』