日本に輸入される鮭の総量のうち4割がチリ産だといわれていますが、チリにおける鮭養殖には日本がかかわっています。チリの鮭養殖は、1969年にチリの水産技術者が北海道を視察したことに端を発しています。

 鮭や鱒はもともと北半球にしか生息していません。南米など、水温の高い地域での養殖は、病原菌などの感染があって不可能と考えられてきたのです。加えて、鮭の皮や粘膜に吸血寄生する「海ジラミ」という虫がいるため、やむを得ずエマメクチン安息香酸塩などの殺虫剤や、オキシテトラサイクリンといった抗生物質を大量に投与しています。

 殺虫剤によってアニサキスなどについての安全は確保されていると考えられるかもしれませんが、養殖の鮭には「劣頭条虫」という特有の寄生虫もいるため、生食をするとこれを食べてしまう可能性があります。

 もう一つ心配なのは、米コーネル大学の研究によると養殖の鮭には天然ものよりはるかに多くのPCB (Poly Chlorinated Biphenyl/ポリ塩化ビフェニル)をはじめとするダイオキシン類や塩素系殺虫剤などの有害物質が含まれているという報告があることです。そのためアメリカではチリ産の鮭の摂取許容量は、年間6回までという目安さえ発表されています。なぜ養殖の鮭に有害物質が含まれるのかといえば、養殖場は沿岸部にあるため、そこに畑などでまかれた農薬に含まれる化学物質が流れ込むことが原因と考えられます。その化学物質が養殖鮭、特に脂肪部分に蓄積されているのです。

 こうなってくると生食はおろか、チリ産の鮭そのものが安全なのかどうか疑わざるを得ない状況です。
(文=南清貴/フードプロデューサー、一般社団法人日本オーガニックレストラン協会代