今、入試シーズンである。

タクシー時代の話をひとつ。

仙台から南に20キロほど離れた田舎町。東京へ向かう電車は、

まっすぐ向かう東北本線と、海岸線を走る常磐線(震災で長くストップして、やっと全線復興した)があり、その分岐の街である。

駅と駅の間は、都会と違って、5〜10キロある。


東北本線側の一つ先の駅には、スポーツに特化した大学がある。

ちょっと前までは、東北、北海道唯一と言われた。生徒も、全国から集まってくる。


ある日、常磐線の駅に配車された。駅といっても何もない駅である。

若い男の子がポツンと立っていた。その大学に行きたいという。

その分岐の町から、別れる電車は、例えれば二等辺三角形。タクシーなら、横に進めばそれほどの距離でもない。


不安そうな青年が、喋りはじめた。

電車に乗って、間違いに気づき、ひとつ目の駅で降り、また分岐の駅まで折り返し戻った。

1時間に一本という電車。昼間は、もっと時間が空くこともある。

そして乗り換えた。また、常磐線に乗ってしまい、さっきと同じ間違えた駅に来てしまった。

本人はきつねに摘まれたような話であろう。


なぜ、2度目の時に、駅員なり、周りの人に聞かなかったのだろうと思う。

不便な場所ゆえ、前日に来ていたため、影響はなかったが、大丈夫だったか、無事入学しているかと、

おばさんドライバーは、母のように案じたものである。

もう20年くらい前の話。プロのスポーツ選手になったか?体育の先生にでもなったか?